こんにちは!
薬剤師うさぎです!
便秘薬(緩下剤)って最近になって新しい薬が増えてきたのもあって、油断しているとどれがどんな作用機序でどんな特徴があるのかあやふやになっちゃいますよね。
そこで! 今回は定期的に復習できるように緩下薬のあれこれを色々な文献からまとめて、さらにざっくりと1枚のイラストにまとめてみました!
ちょうど復習したいと思っていたところなので楽しみである
- 下剤について勉強したい人
- 下剤の種類が多くて理解があやふやになっている人
- 下剤について復習したいと思っている人
- 下剤なんてどれも同じでしょ? と思っている人
- よくわからんけどとりあえずセンノシド!! と思っている人
もくじ
便秘の原因となる腸管の器質性異常の有無の評価、食事を中心とした生活習慣の是正、薬剤性便秘の場合の原因薬剤の中止、減量は終えておく必要がある。2)
正常な排便回数とされるのは週に3回から1日3回であり、腹痛や腹部膨満感、排便困難などの症状がない場合は排便は2日に1回程度で充分なため、安易に濫用しない。7)
酸化マグネシウム→各種新規緩下剤、漢方薬 +刺激性下剤や浣腸の頓用使用 参考文献(5)より引用
・保険診療ではまず酸化マグネシウムより始める(保医発)
・下剤治療の基本は非刺激性下剤の安定的服用による自然な蠕動運動が生じやすい環境づくり。7)
浸透圧性下剤
腸内の浸透圧を高めて腸内腔へ水分を引き寄せることで便の水分量を増加させ、膨張・軟化した便が腸管を刺激する。
塩類下剤
胃酸と反応して塩化マグネシウムになったあと、腸内において難吸収性の重炭酸塩や炭酸塩となり、それらが便と混ざることによって浸透圧作用により便を軟化させる。
そのため、糞便に均等に分泌するように1日1回よりも1日2〜3回のほうが効果的。7)
胃切除後や酸分泌抑制薬を服用している患者は胃酸分泌が低下しているため、薬効が十分に得られない可能性がある。
高マグネシウム血症に注意(特に高齢者や腎機能障害がある患者)。使用を控えるか、定期的(3〜6ヶ月に1回など)な血清マグネシウム濃度の測定が必要。
塩類下剤
エチレングリコールが重合した高分子化合物(分子量数万)。腸管内の浸透圧を亢進させることで水分量を増加させる。
欧米では長年便秘に対する第一選択として使用されているとのこと。
安全性が高い(ほとんど分解も吸収もされないため)。
液体に溶かして内服するため微調節が可能。また、味の好みが分かれるよう(やや塩味)。
糖類下剤
上記2つの緩下剤が使いづらいときの選択肢
浸透圧作用と大腸内で分解され有機酸による蠕動亢進や腸内細菌叢の変化が知られている。
透析患者への有効性のエビデンスがある。腸内細菌の餌としてプレバイオティクス作用がある。4)
糖類下剤だが腸管から吸収されず血糖値に影響を与えないため、糖尿病患者にも問題なく使用可能。7)
上皮機能変容薬
小腸粘膜を覆っている小腸上皮細胞には管腔側(内側)に2型Clチャネルや嚢胞性線維症膜貫通調節因子(CFTR)が存在し、腸管内腔へのCl分泌を行うことにより水分分泌を担っている。
クロライドチャネルアクチベータ
CIC-2クロライドチャネルを活性化しClイオンを管腔側に分泌することで、腸管内への水分分泌を促進し便を柔らかくする。
ルビプロストンはプロスタグランジンE1に類似した構造を持ち、プロスタグランジン受容体を介してCFTRを活性化し腸管内へのCl分泌を亢進させることで便秘を改善させるとも考えられている。6)
若〜中年者(特に女性)において吐き気、下痢の症状が比較的出やすい(用量依存性)
1日1回夕食直後などから始めるのが無難。2)
吐き気の副作用を軽減するために空腹時の内服は避けて、食直後や食事中に内服することが推奨されている。
投与数日間が吐き気のピークでその後は慣れてくるため、服用タイミングと併せて十分な服薬指導が重要
妊婦には禁忌となっているため注意(動物実験にて流産・早産の頻度が増加したことから)
グアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体作動薬
GC-C受容体を活性化することにより、細胞内のcGMP濃度を増加させる。それによりCFTRが活性化し、腸管分泌及び腸管輸送能を促進する。
それとともに、大腸痛覚刺激を抑制(→腹部不快感を改善)する作用もある(cGMP上昇を内蔵知覚神経の抑制作用→知覚過敏の抑制により腹痛が改善)。
腹痛を伴う便秘患者に有効
ペプチド製剤であり吸収されないため、併用に注意が必要な薬剤は特にない。
副作用として下痢が知られているが、食前30分前の服用により改善するとされている。6)
胆汁酸トランスポーター阻害薬
胆汁酸は肝臓で産生され食事などの刺激により十二指腸に分泌されるが、約95%が回腸末端で再吸収され腸肝循環し、約5%が大腸へ流れているとされる。
エロビキシバットは胆汁酸の再吸収に関わる回腸末端部の胆汁酸トランスポーター(IBAT)を阻害し胆汁酸の再吸収を抑制することで、大腸管腔内に流入する胆汁酸の量を増加させる。
その後、大腸に移行した胆汁酸が胆汁酸受容体(TGR5:trans membrane G-protein coupled receptor 5)に結合しcAMPを生成、CFTRを活性化することでCl分泌を促進して水分量を増加させることで、またセロトニンを放出して消化管運動も促進させる(セロトニンは腸内神経叢の感覚神経を介し腸管の蠕動運動亢進作用がある)ことで排便を促す。
作用機序的にも胆汁酸が多いほうが効果が出やすいと考えられるため、食前に服用することとなっている(用法:1日1回食前)。
投与初期数日に腹痛(大腸運動促進作用による蠕動痛)が発生しやすい(使用成績調査で約2%)が、多くは軽度で排便によって改善する(服薬指導ポイント!)。
大腸蠕動促進作用はセンノシドほどは強くないが、刺激性の要素を持つため原則として第一選択にはならない。7)
刺激性下剤
大腸の腸内細菌によりレインアンスロンとなり、大腸(の腸内神経叢)を刺激して蠕動運動を起こし排便を促進する。
効果発現まで6〜8時間かかるため、就寝前に内服することが多い。
作用発現時に腹痛を惹起することが多く、高齢者では硬便排出後の液状便のために便失禁を生じることがあるため、毎日の内服は推奨できない。7)
また、長期連用により腸内神経叢が疲弊し耐性を生じる可能性がある。
排便に関する腸管機能温存の観点から、使用をできるだけ頓用とし必要最小限にとどめるべき。2)
初療からの刺激性下剤の連用は厳に慎むべき。4)
妊婦は子宮収縮を誘発して流早産の危険があるため、添付文書上原則禁忌となっている。
腸内細菌(アリルスルファターゼ)により生じた活性型のジフェノール体(ジフェノールメタン)が大腸を刺激し、蠕動運動を促す。
効果発現まで7〜12時間かかるため、センノシドと同様就寝前に内服することが多い。
アントラキノン系と比べると効果はややマイルドとされる。2)
同様に耐性が出現する可能性があるため、必要最小限の使用にとどめるほうがよい。2)
+水分吸収阻害作用により腸管内に水分貯留をきたして便を柔らかくする作用もある。
妊婦に対してはセンノシドとは異なり有益性投与となっている。
オピオイド誘発性便秘症治療薬
オピオイドは中枢のオピオイドμ受容体に結合することにより鎮痛作用を発揮するが、ナルデメジンは消化管のオピオイドμ受容体へのオピオイドの結合を阻害することで、受容体に起因する便秘を改善する(側鎖により血液脳関門をあまり通過しないため、オピオイドの鎮痛作用には影響しない)。
オピオイドは消化液の分泌を抑制し、消化管運動も抑制することにより消化が遅延することで硬便となる。
投与初期に下痢を認めるが、数日で改善する(服薬指導ポイント!)
粘滑性・潤滑性下剤
浸潤性下剤のジオクチルソジウムスルホサクシネートと刺激性下剤のカサンスラノールの 2 種類の作用機序が異なる成分を配合している。
生薬カスカラサクラダから抽出される大腸刺激成分のカサンスラノールが大腸に作用し、周期的な蠕動運動の促進と、内容物の移行を妨げる分節運動の抑制を組み合わせて結腸内容移送を促進する。
カサンスラノールの腸管刺激性はセンノシドの10分の1程度8)と弱い。
界面活性作用を機序とするジオクチルソジウムスルホサクシネートが、硬い便に水分を浸透させ、便を軟化し排便を容易にする。
酸化マグネシウムと同様に非刺激性下剤として使用できる。
1日最大量が6錠なので微調整が可能な点もメリット。
膨張性下剤
非刺激性下剤で軟便化しているにもかかわらず排便回数が週に3回未満と少ない場合に大腸通過正常型便秘症(食物繊維摂取量が少ない!)を疑い栄養指導を行うか、糞便量を増加させる膨張性下剤を用いる。7)
小腸や大腸の中性条件下で本体の35倍以上の水分を吸収して膨潤・ゲル化して便の水分バランスを調整する。
下痢の場合:腸内の水分を吸収してゲル化し、腸内容物の移送を遅らせて腸管による水分吸収を促進し、便を固形化する。
便秘の場合:小腸内で吸収した水分で膨潤・ゲル化することによって、便の移行を促進し、水分を保持することで便からの水分の吸収を阻止して便を柔らかい状態に調整する。
水とともに腸内で粘性のコロイド状となり、軟化した便に浸透することで便容積を増大させ、腸壁に刺激を与える。
漢方薬
便秘薬としての作用は含まれる大黄の量に比例する。5)
- 大黄甘草湯:4g
- 麻子仁丸:4g
- 潤腸湯:2g
- 防風通聖散:1.5g
刺激性下剤同様に耐性が出現する可能性が指摘されている。2)
電解質異常を起こすため甘草の有無に注意。
甘草含有:大黄甘草湯、潤腸湯、防風通聖散など。
大建中湯、桂枝加芍薬湯:大黄が含まれていないため便秘としての適応はないが、通常の便秘治療で排便コントロールが得られても腹部の症状を訴える患者への投与で患者満足度が上がることがある。5)
上の白っぽいのが小腸で、下の赤っぽいのが大腸です。右上から左下に繋がっているイメージですね。
こんな感じで流れとともに覚えておくと、後からイメージで思い出しやすいのでオススメです。
み、見づらい
作ってるときはいい感じだと思ってたんですが、完成してから眺めてみたら超見づらかったです……
- 各種添付文書、インタビューフォーム
- 山田英司ほか「慢性便秘の薬物治療」医療 75(1): 4-8, 2021.
- 今日の治療薬2020
- 中島淳「新規便秘薬の特徴とその使い方」THE GI FOREFRONT 16(1): 27-30, 2020.
- 中島淳ほか「6 慢性便秘の診断と治療薬の選択」消化器クリニカルアップデート 2(1): 41-47, 2020.
- 鳥巣剛弘ほか「便秘症の治療 新規薬物治療」臨牀と研究 96(11): 1276-1279, 2019.
- 味村俊樹「慢性便秘症治療薬の正しい使い方 新規便秘症治療薬の適切な使用方法をマスターする」レジデントノート 21(4): 715-723, 2019.
- 岡崎啓介「刺激性下剤の使い方の検討一大腸通過時間を指標として一」日本大腸肛門病学会雑誌,64:408-413,2011