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【イラストでわかる】肝性脳症とその治療薬まとめ

薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

こんにちは! 薬剤師うさぎです。

今回は肝性脳症の概要とその治療薬について、文献からざっくりまとめてみました。

そしてまとめをさらにまとめて1枚のイラストにしています。

肝性脳症の治療薬について知りたい! という人はぜひ読んでみてください。

肝性脳症とは

肝性脳症とは?

肝性脳症とは、腸管由来の昏睡起因物質(アンモニアなど)が肝臓の解毒、代謝能の低下、あるいは門脈大循環短絡(シャント)によって、肝臓での代謝を免れて大循環に流入するために起こる代謝性脳症のこと。

アンモニアは通常肝臓の尿素サイクルで尿素に合成・解毒されるが、肝硬変患者では尿素回路の機能低下により、門脈へ流入したアンモニアが肝細胞で処理されず体循環に高濃度で循環する。

これにより脳内に蓄積したアンモニアがアストロサイトにおいてグルタミンに代謝・解毒される際に、増加したグルタミンが細胞の膨化、浮腫をきたし脳症を発症すると想定されている。

他にも原因として、中枢神経での偽神経伝達物質作用やγ-aminobutyric acidレセプターの活性化などが挙げられている。

アンモニアはどこで産生される?

従来アンモニアの主な発生源は大腸の腸内細菌と考えられてきた(実際腸内細菌を標的とした抗菌薬は肝性脳症に対して効果を示す)。

しかし、近年腸管でのグルタミン代謝によるアンモニア産生もかなりの割合を占めることが明らかとなってきている。4)

アンモニアはどうやって解毒する?

尿素回路

肝臓においてアンモニアを尿素に変換することで無毒化する経路。

おかしあるにょ〜(オルニチン、カルバモイルリン酸→シトルリン→アルギニン→尿素)のゴロが有名。

グルタミン合成系

主として骨格筋と脳にあるアンモニア代謝経路

基本的にはアンモニアをグルタミン酸が取り込みグルタミンを合成することでアンモニアが処理されるが、この経路では分岐鎖アミノ酸(BCAA)が消費される。

健常人では動脈血の約半分のアンモニアが骨格筋で処理されるが、肝硬変により処理しきれないアンモニアが増えると、その分のアンモニアをグルタミン合成系が処理するため、BCAA消費が増加し体内のBCAA欠乏が起こる

脳ではグルタミン合成系が活性化されて細胞外液中のグルタミン濃度が高くなると、アストロサイトの腫脹や脳圧充進を起こすことで肝性脳症を増悪させる。

アンモニアを減少させるにはどうする?

腸管からの吸収を減らすか、体内にあるアンモニアを肝臓の尿素回路へ誘導する必要がある。

肝性脳症の治療薬まとめ

概要

国内外いずれのガイドラインにおいても肝性脳症に対する初期治療としては合成二糖類、次期治療としては腸管非吸収性抗菌薬が推奨されている。5)

BCAA製剤は国内ガイドラインでは強く推奨されている。

いずれの治療にも不耐の症例に対しては、カルニチン製剤や亜鉛製剤を考慮する。

合成二糖類

ラクツロース®シロップなど

肝性脳症の第一選択

プラセボに対して相対リスクを0.6倍に低下させたことがメタ解析で示されている。6)

大腸で腸内細菌により乳酸などに分解されることでpHを低下させ、腸内浸透圧も上昇させる。その結果、アンモニア産生菌の増殖抑制効果や腸内容物の排泄促進効果を発揮する。

経口投与の場合、2〜3回/日の排便回数となるように用量を調節する。

アドヒアランスの低下は肝性脳症の再発に関与するため、定期的に服用の確認が必要。

難吸収性抗菌薬

リフキシマ®など

日本ではカナマイシンやポリミキシンBなどが使用されてきたが、いずれも保険適用が無く、長期投与ではアミノグリコシド系であるカナマイシンで聴覚障害、ポリミキシンBでは腎障害などが懸念されていた。

しかし、リファマイシン系抗菌薬リファキシミン(リフキシマ®)が「肝性脳症における高アンモニア血症の改善」を効能または効果として2016年から保険収載された。

リファキシミンは細菌のDNA依存性RNAポリメラーゼのβサブユニットに結合することによってRNAの合成を阻害し殺菌的に作用する。

ウレアーゼ活性を有し、アンモニア産生菌と考えられているProteus, Klebsiella, Pseudomonasなどの好気性グラム陰性桿菌から嫌気性グラム陰性桿菌のBacteroidesまで広い抗菌活性を有する。

極めて難溶性であり、腸管からほとんど吸収されず、96%以上が糞便中からほぼ未変化体として排泄される(バイオアベイラビリティは0.4%未満とされている)。

このことから、リファキシミンによる全身性の有害事象の可能性や薬物相互作用の可能性は極めて低いと考えられている。

合成二糖類への上乗せ効果が報告されている。7)

合成二糖類による治療で高アンモニア血症の改善が乏しい場合や合成二糖類に不耐容の場合に用いられることが多い。

亜鉛

ノベルジン®など

尿素回路のオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)は活性に亜鉛を必要とする。

そのため、亜鉛はアンモニア代謝に深く関与する。

肝硬変患者では欠乏しやすい。

実際、慢性肝疾患では血中の亜鉛濃度の低下に伴い、肝臓でのアンモニア処理能が低下し、骨格筋(グルタミン合成系)でのアンモニア処理量が増加するため、フィッシャー比の低下やアンモニア濃度の上昇が見られる。

肝硬変に対して硫酸亜鉛投与でナンバーコネクションテストなどの脳症の指標の改善とアンモニアの有意な低下、フィッシャー比の軽度上昇を認めている。8)

合成二糖類、難吸収性抗菌薬とは機序が異なるため相乗効果が期待される。

亜鉛とラクチトールとの併用効果の検討では、おのおのでは約30%だった低下作用が、併用で50%となることが示されている。9)

カルニチン製剤

エルカルチンFF®など

アンモニアをカルバモイルリン酸に変換するカルバモイルリン酸合成酵素は、脂肪酸の代謝で発生するアセチルCoAとグルタミン酸から合成されるN-アセチルグルタミン酸が正のコファクターとして必須であるため、脂肪酸代謝に必要なカルニチンの欠乏が起こると活性化が抑制される。

そのため、カルニチンもアンモニア代謝に深く関与する。

カルニチン補充療法の意義は長鎖脂肪酸の運搬体である遊離カルニチンを補充するだけでなく、蓄積した毒性をもったアシルCoAのアシル基を受け取りアシルカルニチンとして体外へ排泄し種々の代謝に必要な遊離CoAプールを維持することである。

肝硬変患者では欠乏しやすい。

肝硬変の肝性脳症に対して、1日2gのアセチルLカルニチンを90日間投与し、血中アンモニア値や脳は、肝性脳症の神経機能検査の改善がみられたことが報告されている。10)

合成二糖類、難吸収性抗菌薬とは機序が異なるため相乗効果が期待される。

肝硬変患者でよく認められる重度のこむら返りや倦怠感に対しても、カルニチン補充療法の有用性が報告されている。11)

カルニチン補充療法は、サルコペニア・フレイルを改善する可能性がある。

分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤

アミノレバン®、リーバクト®など

血中に増加したアンモニアは代償的に骨格筋で代謝されるが、その際にグルタミン合成系でBCAAが消費される。

PEM(Protein energy malnutrition:蛋白・エネルギー低栄養状態)の有無や臨床症状により使い分けることが重要。

輸液製剤は血中および脳内のアミノ酸インバランスの是正による脳内神経伝達障害の改善を目的とし、即効性が期待できる。

劇症肝炎などの高度に肝機能が低下している場合は、過剰な窒素負荷となり、肝性脳症を悪化させる可能性があるので禁忌。

経口投与は肝性脳症がⅡ度以下となれば検討。

血中アミノ酸インバランスの是正のみならず肝硬変患者の栄養状態を改善させるため投与することが推奨されている。

PEMがあれば経腸栄養剤、なければ顆粒製剤を用いる。

LES(就寝前補食療法:late evening snack)としての使用も有用。

 LESについては以前のブログでまとめているので、気になる方はこちらもどうぞ!
 →アミノレバン就寝前はなぜ就寝前じゃなきゃいけないんですか? 

まとめイラスト

参考文献

  1. 遠藤啓, 滝川康裕, 肝性脳症の診断と薬物治療, 肝臓クリニカルアップデート 6(2): 151-154, 2020.
  2. 片山和宏, 肝性脳症に対する亜鉛・カルニチンの有用性, 肝臓クリニカルアップデート 6(2): 155-161, 2020.
  3. 村田礼人, 玄田拓哉, 難吸収性抗菌薬 – リファキシミンの有効性・安全性 -, 肝胆膵 78(3): 391-396, 2019.
  4. Holecek M :Ammonia and amino acid profiles in liver cirrhosis: effects of variables leading to hepatic encephalopathy. Nutrition 31:14-20,2015
  5. 小川浩司ほか, 肝性脳症治療の流れと各薬剤の位置づけ, 肝胆膵 78(3): 379-384, 2019.
  6. Gluud LL, Vilstrup H, Morgan MY:Non-absorbable disaccharides versus placebo/no intervention and lactulose versus lactitol for the prevention and treatment of hepatic encephalopathy in people with cirrhosis, Cochrane Database Syst Rev CODE 3044,2016
  7. Sharma BC, Sharrna P, Lunia MK, et al:A Randomized, double-blind, controlled trial comparing rifaximin plus lactulose with lactulose alone in treatment of overt hepatic encephalopathy. Am J Gastroenterol 108:1458-1463,2013
  8. Marchesini G, Fabbri A, Bianchi G, et al:Zinc supplementation and amino acid-nitrogen metabolism in patients with advanced cirrhosis. Hepatology 23:1084-1092,1996
  9. 片山和宏,大岡優子,吉川澄ほか:慢性肝疾患の窒素代謝における血中亜鉛の意義についての検討,肝臓42:120-125,2001
  10. Malaguarnera M, Vacante M, Motta M, et al: Acetyl-L-carnitine improves cognitive functions in severe hepatic encephalopathy:randomized and controlled clinical trial. Metab Brain Dis 26: 281-289,2011
  11. 『カルニチン欠乏症の診断・治療指針 2018』 – 日本小児科学会
  12. 前田晃史「第1特集 出会ったらどうする? こんなケース消化器患者の急変・トラブル ベスト&ワースト対応!」消化器ナーシング 2020 vol.25 no.7 (659) 51

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