投与速度に注意が必要な注射薬とその理由まとめ

投与速度に注意をしなければいけない注射薬は意外とたくさんありますが、添付文書にはあまりちゃんと書かれていなかったり、注意すべき理由がよくわからなかったりして歯がゆい思いをすることってよくありますよね。

そこで、薬剤師が注射薬の処方監査をする時に気をつけるべき「投与速度に注意が必要な注射薬」をまとめて一覧にして、根拠を持った疑義照会ができるようにできるだけ理由も一緒に記載しました(主に添付文書、インタビューフォーム、審査報告書、各種文献情報を参考としています)。

溶解液の量や種類に注意が必要な注射薬一覧とともにブックマークしたり印刷したりして日々の薬剤師業務に活用してもらえると嬉しいです。

内容は順次アップデートしていきたいと考えているので、これも追記したほうがいいのではというのがあればぜひ教えてください。

もくじ

投与速度に注意が必要な「あ行」の注射薬

アシクロビル点滴静注用250mg(商品名:アシクロビン点滴静注など)

1時間以上かけて投与

血管痛予防

アスパラカリウム注10mEq

20meq/hを超えない

不整脈、心停止などをきたすおそれ[1]

アセリオ静注液1000mg

15分かけて静脈内投与

15分未満:血圧低下、15分以上:血中濃度が上がらない

アタラックスP注射液25mg

25mg/分未満の投与速度でできるだけ遅くする

静脈炎、一過性の溶血を起こすおそれ[1]

アネメトロ点滴静注液500mg

20分以上かけて点滴静注

臨床試験において20分で安全性、有効性が検討されているため。また海外の添付文書でも20分以上と規定されており、20分以内での安全性は臨床研究報告があるのみで十分に確立していないため。

※Cmax(20分で投与時):39.2µg/mL、Cmax(60分で投与時):33.7µg/mL

アミノ酸(商品名:アミノレバン点滴静注など)

10 g/時前後(約0.2g/kg/時)

急速投与で悪心・嘔吐、BUN上昇、高アンモニア血症など

アミノフィリン注250mg(商品名:ネオフィリン注など)

急速静注を避ける

急速に静脈内に投与すると、めまい、脱力感、ふらつき、動悸、湿疹、前胸部痛、紅潮、徐脈、心室性期外収縮、重度の低血圧、心停止を誘発する可能性があるため。また、急速な静脈内投与による一過性の血中濃度上昇が痙攣発作を誘発するため[7]

アムビゾーム点滴静注用50mg

1~2時間以上かけて点滴静注

投与時関連反応:発熱、悪寒、悪心、嘔吐、頭痛、背部痛などの予防のため

アルブミナー5%静注 12.5g/250mL、25%静注12.5g/50mL

どちらも1本で1時間程度が目安

高張アルブミン製剤で1~2mL/分(30分~1時間)の速度で投与することが推奨されているが、実際は循環動態の変化に応じてアルブミンの投与速度の調節が必要

急激に循環血漿量が増加すると肺水腫、心不全などを起こす恐れがあるため

イーケプラ点滴静注500mg

1回量を15分かけて静脈内投与

臨床試験が全て15分で行っているため。また、海外での使用実績&15分投与で経口投与に比べ有害事象発生率が高くなる傾向が認められなかったことも考慮して(※有害事象:傾眠、めまい、頭痛など)

→海外:15分投与時に経口投与時と比べ血中未変化体濃度推移が類似していたことから15分で設定

4000mg15分以上と2500mg5分以上において、めまいや頭痛などの出現頻度は高かったが、副作用の発症頻度に違いは認められなかった。[6]

→副作用のことだけを考えるのであれば、1回投与量(500-1500mg)であれば5分程度でも投与は可能か

イントラリポス輸液

0.1g/kg/h(小児は0.08g/kg/h)以下の速度で投与

この速度を超えると血中脂質の増加、脂肪利用率低下、免疫機能の抑制などのおそれ[4][5]

献血ヴェノグロブリンIH5%静注

投与開始から1時間は0.01mL/kg/分で投与し、副作用等異常所見が認められなければ0.03mL/kg/分まであげてもよい

ショック等の副作用は投与開始1時間以内、また投与速度を上げた際に起こる可能性があるため

エダラボン点滴静注液30mg(商品名:ラジカット注30mg)

30分かけて点滴静注

30分投与は脳浮腫を有意に抑制したが60分投与は抑制効果を示さなかったことから(ラットで)

塩化ナトリウム注

原則として0.5mEq/L/hの上昇に留める(3%NaClだと0.5~0.6mL/kg/h)

急速なNa補給は浸透圧性脱髄症候群を起こす恐れがある

オノアクト点滴静注用

心機能低下例では10 µg/kg/minまで、敗血症に伴う場合は20 µg/kg/minまで、手術中・手術後における頻拍性不整脈や生命に危険がある難治性不整脈の緊急処置には最大40 µg/kg/minまで増量可能

通常であれば血圧低下作用より陰性変事作用が先行して現れるが、高用量で投与した場合に90mmHg以下の血圧低下を示す症例が報告されている。そのため、過度の血圧低下や徐脈を避けるために心電図モニター、心拍数の監視、血圧測定を行いつつ漸増していく。[7]

投与速度に注意が必要な「か行」の注射薬

ガベキサートメシル酸塩静注用500mg(先発品名:注射用エフオーワイ500)

2.5mg/kg/時以下が望ましい

投与速度が増加すると血圧が低下することがあるため

カルチコール注射液8.5%

緩徐に静注(カルシウムとして毎分0.68~1.36mEq:1.7~3.5mL)

急速投与で心悸亢進、徐脈、血圧変動、熱感などが現れるおそれ

カンレノ酸カリウム静注用200mg(先発品名:ソルダクトン静注用200mg)

ゆっくりと静注

血管痛を起こしやすいため

キュビシン静注用350mg

30分かけて点滴静注または緩徐に静注

臨床試験における点滴時間が30分間だったことから

→緩徐に(2分間かけて)静注したときと30分間静脈内投与したときのCmaxは同程度

→分布容積が小さく、分布相半減期が数時間であることから

→「1時間かけて」というオーダーも血中濃度的には別に問題ないのかもしれません

グリセレブ配合点滴静注、グリセオール注

500mLあたり2~3時間かけて点滴静注(200mLだと1時間程度)。200mLを30分で投与した報告もある。救急外来での救命措置など一刻を争う場合は500mLを30分程度で点滴静注する方法が用いられる

溶血や腎障害、脱水、乳酸アシドーシスなどのリスクが高まるため急速投与は重症例や手術を前提とする場合以外は避けることが望ましい

設定された投与時間に明確な根拠はない。投与速度が早ければ急速に血管内容量が増加するため心不全や肺うっ血の悪化には注意が必要である[7]

クリンダマイシン注射液600mg(先発品名:ダラシンS注射液600mg)

30分~1時間かけて投与(30mg/分を超えない)

急速投与で心停止をきたすおそれ

ケイツーN静注

緩徐に静注

急速投与でショック症状があらわれることがある

KCL注

20meq/hを超えない

不整脈、心停止などをきたすおそれ

ゲムシタビン点滴静注用

30分かけて点滴静注

60分以上で骨髄抑制や肝機能障害

投与速度に注意が必要な「さ行」の注射薬

サングロポール点滴静注用2.5g

初回の投与開始から15~30分は0.3~0.6mL/分で投与し、副作用等の異常所見が認められなければ、0.9~1.5mL/分まで徐々に速度を上げてもよい

急速投与で血圧降下を起こすことがあるため

ジスロマック点滴静注用500mg

2時間かけて点滴静注

1時間かけて投与した場合、2時間かけた場合と比較して注射部位疼痛が多く認められたため

シプロフロキサシン点滴静注液(先発品名:シプロキサン注)

1時間かけて投与(30分以内の点滴静注は避ける)

急速投与で血管痛や静脈炎が起きうるため

セフェピム塩酸塩静注用1g(先発品名:注射用マキシピーム)

30分以上かけて点滴静注

静脈内大量投与により、まれに血管痛、血栓性静脈炎などを起こすことがあるため

セフトリアキソンナトリウム静注用(先発品名:セフキソン静注用)

30分以上かけて点滴静注

静脈内大量投与により、まれに血管痛、血栓性静脈炎、ほてり感、嘔気などを起こすことがあるため

注射用ソル・メルコート

緩徐に静注または点滴静注

血管痛、静脈炎の予防。また、高用量を急速静注(500mgを10分未満で投与)で心停止、循環性虚脱、不整脈等があらわれたとの報告あり。250mgを超える場合は少なくとも30分以上かけて投与することが望ましい

ゾレドロン酸点滴静注(先発品名:ゾメタ点滴静注)

15分以上かけて投与

5分間で点滴静注した海外の臨床試験において急性腎不全が発現した例あり

投与速度に注意が必要な「た行」の注射薬

テイコプラニン点滴静注用200mg(注射用タゴシッド200mg)

30分以上かけて投与

レッドネック症候群の予防

デノシン点滴静注用

1時間以上かけて点滴静注

強アルカリ性(pH約11)であり血管痛・静脈炎があらわれることがあるため

最大投与速度 5mg/kg/min

代謝合併症(高血糖など)を防ぐため

トラネキサム酸注射液(先発品名:トランサミン注)

ゆっくり静脈内に投与(100mg/minを超えない)

急速投与で悪心、胸内不快感、心悸亢進、血圧低下などがあらわれることがあるため

投与速度に注意が必要な「な行」の注射薬

ノーベルバール静注用250mg

100mg/分を超えないよう、10分以上かけて緩徐に静注

急速な血中濃度上昇により意識障害、血圧低下、呼吸抑制のおそれがあるため

投与速度に注意が必要な「は行」の注射薬

バクトラミン注

1~2時間かけて投与

2時間以上で結晶析出

バンコマイシン点滴静注用0.5g

1時間以上かけて投与

レッドネック症候群の予防

ビタミン(商品名:ノルニチカミン注、ナイロジン注など)

できるだけ投与速度は遅くする

血管痛、アレルギー反応などが起こることがあるため

ビムパット点滴静注100mg

30分以上かけて点滴

30分・60分の点滴投与において、経口投与時の薬物動態プロファイルとの類似性が認められ、有効性・安全性が同様であることが示されているため。

ファンガード点滴用

75mg以下の場合は30分以上、75mgを超える場合は1時間以上かける

副作用(アナフィラキシーや溶血)への注意が必要であるため

ブイフェンド200mg静注用

1時間あたり3mg/kgを超えない速度で投与

添加物SBECDの血漿中濃度の急激な上昇に伴いショック・アナフィラキシーを起こすことがあるため

フェジン静注

2分以上かけて徐々に静注

ワンショットで頭痛、倦怠感、悪心、心悸亢進、蕁麻疹など。逆に投与時間が長すぎる(30分など)とpH変動により鉄イオン遊離が促進し副作用の要因となる

フルコナゾール静注液100mg(ジフルカン注射液100mg)

10ml/分を超えない速度で投与することが望ましい

ホストイン静注

1mg/kg/minまたは75mg/minの低い方を超えない。てんかん重積状態の初回では3mg/kg/minまたは150mg/minの低い方を超えない。

急速に静脈内投与した場合心停止、一過性の血圧低下、呼吸抑制などを起こすことがある

ホリゾン注射液

できるだけ緩徐に(2分以上かけて)静注

血管痛が起きるため(浸透圧比約27:生食に対する比)

投与速度に注意が必要な「ま行」の注射薬

20%マンニットール注射液

100mL/3〜10分

大量のマンニトールを急速に注入すると、細胞の脱水、低ナトリウム血症、容量過負荷によるうっ血性心不全と肺水腫を引き起こす可能性があるため

投与速度に注意が必要な「ら行」の注射薬

ラピアクタ点滴静注液

15分以上かけて単回点滴静注

臨床試験で15-60分の点滴時間で行っており、15分以内やワンショットでの有効性、安全性について担保できるデータがないため

リコモジュリン点滴静注用12800

約30分かけて投与

急速投与と比べて安全性を考慮した結果、万が一投与中に不具合が生じた結果即座に中止できる30分が採用となった。

ちなみに第Ⅰ相試験では2時間の持続静注で実施しているが、2時間の際と30分の際のCmax、血中濃度推移は同程度

硫酸Mg補正液

最大投与速度 20 mEq/h

低Mg血症で緊急補正する場合は、硫酸Mg水和物として1〜2g(Mg+として8〜16mEq)を5〜10分以上かけて投与するが、最大4g(Mg+として最大32mEq)を4〜5分で投与投与してもよい[10]

マグネシウムを急速静注すると、Mg2+が神経筋接合部におけるアセチルコリンの放出を阻害し、神経インパルスの伝達を遮断して骨格筋弛緩を起こすことにより麻酔様状態を認めることがある。また、急速静注により一過性に高マグネシウム血症を生じ、心臓における伝達障害や低血圧を誘発する可能性があるため[7]

リン酸Na補正液

ゆっくり静脈内に点滴投与する

安全性が報告されている静脈投与における投与速度はリンとして 20 mmol/hまで[8]、血栓性静脈炎などの副作用を最小限に抑え、リン酸カルシウム沈殿のリスクを低減するため、リンとして7mmol/h以下を推奨している報告もある[9]

急速投与は低血圧、異所性石灰化による臓器障害、血中のCaとの結合による低Ca血症などのリスクがあるため

レボフロキサシン点滴静注バッグ(先発品名:クラビット点滴静注)

60分かけて点滴静注

非臨床成績から、静脈内急速投与により低血圧を引き起こす可能性が否定できないこと、また海外での臨床実績として約60分間点滴静注で重大な問題が報告されていなかったことより、約60分かけて緩徐に点滴静注する。

ロピオン静注

緩徐に(1分以上の時間をかけて)静注

急速投与で血圧、心拍数が上昇(動物実験データ)

参考文献

編集中…
  1. 添付文書
  2. インタビューフォーム
  3. 審査報告書
  4. 静脈経腸栄養ガイドライン第3版
  5. 瀧藤克也, 脂肪乳剤の種類と現状, 日本静脈経腸栄養学会雑誌 33(2) : 726-730 : 2018
  6. Steven Ramael et al., Levetiracetam intravenous infusion: a randomized, placebo-controlled safety and pharmacokinetic study, Epilepsia. 2006 Jul;47(7):1128-35.
  7. 安宅一晃ほか監修(2021)「病棟・ICU・ERで使える クリティカルケア薬」じほう
  8. Daniël A Geerse, et al, Treatment of hypophosphatemia in the intensive care unit: a review, Crit Care. 2010; 14(4): R147.
  9. Michael D Kraft et al, Treatment of electrolyte disorders in adult patients in the intensive care unit, Am J Health Syst Pharm. 2005 Aug 15;62(16):1663-82.
  10. Garrison M Tong et al., Magnesium deficiency in critical illness, J Intensive Care Med. 2005 Jan-Feb;20(1):3-17.

2 COMMENTS

ふたば

根拠文献も併記して頂けるとより医師に提案しやすくなるのでお願いできないでしょうか…

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Autm

ふたばさん
コメントありがとうございます。
6-7割くらいは添付文書、IF、審査報告書のどれかに載っていた情報だったと思うのですが、確かに併記されていたほうがすぐに根拠がわかって提案の際に利便性がいいかもしれませんね。
時間はかかるかもしれませんが取り組みたいと思うので、しばしお待ちいただきたいです。

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