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【文献】第一世代抗ヒスタミン薬は転倒リスクを増加させる?

第一世代抗ヒスタミン薬はH1受容体占有率が高く眠気が起きやすいことが知られており、高齢者の転倒にも関連してくると言われています。

では実際にどの程度転倒に影響してくるのでしょうか?

第一世代抗ヒスタミン薬の使用と転倒リスクの関連について調べたシステマティックレビューとメタアナリシスについてまとめてみました(アブストラクトのみ)。

第一世代抗ヒスタミン薬は転倒リスクを増加させる?

文献情報

Meta-Analysis Osteoporos Int. 2018 Oct;29(10):2163-2170

Antihistamine use and the risk of injurious falls or fracture in elderly patients: a systematic review and meta-analysis

H Cho , J Myung , H S Suh , H-Y Kang

  • PMID: 30046925
  • DOI: 10.1007/s00198-018-4564-z

アブストラクト

抗コリン性の副作用があるにもかかわらず、第一世代の抗ヒスタミン薬は高齢者に広く処方されている。

現実世界でのエビデンスを統合するためにシステマティックレビューが実施された結果、第一世代の抗ヒスタミン薬は高齢者における転倒や骨折のリスクの増加と大幅に関連していた。

イントロダクション

第一世代抗ヒスタミン薬は抗コリン作用の副作用により、高齢者には潜在的に不適切であると考えられている。

抗ヒスタミン薬を服用している高齢者は転倒や骨折の危険性が上昇しているかどうかを明らかにすることを目的とした。

方法

2016年11月までにMEDLINE、EMBASE、およびいくつかのローカルデータベースで研究を同定した。

抗ヒスタミン薬の使用と傷害性転倒または骨折のリスクとの関連に関する観察研究を選定した。研究の質とエビデンスのレベルを評価した。

メタ解析にはランダム効果モデルを採用し、I二乗とコクランのQ検定に基づいて不均一性を検討した。研究間の異質性が説明できない場合には、サブグループ分析を行った。

結果

473件の研究のうち、5件(症例対照研究3件、コホート研究1件、症例クロスオーバー研究1件)を適格基準に基づいて解析対象とした。

第1世代の抗ヒスタミン薬の使用は転倒または骨折のリスクを有意に増加させた(オッズ比[OR] 2.03、95%信頼区間[CI] 1.49-2.76、異質性:p = 0.41、I2 = 0%)。

全世代や世代情報を含まない抗ヒスタミン薬での結果でも入院中の転倒と関連しており、これらの研究ではこの関連は異質性なしに統計的に有意であった(OR 2.89、95%CI 1.71-4.89、異質性:p = 0.42、I2 = 0%)。含まれている研究数が少なく調整されていない結果のため、サブグループ分析に基づく意味のある解釈は限られていた。

結論

第一世代の抗ヒスタミン薬の使用は高齢者における転倒や骨折リスクの増加と大幅に関連していた。

臨床医は高齢者に第一世代抗ヒスタミン薬を処方する際に注意が必要である。

第一世代抗ヒスタミン薬とH1受容体占有率

Int J Mol Sci. 2019 Jan 8;20(1):213.より引用改変

抗ヒスタミン薬は脳内のヒスタミンH1受容体の占拠率(全体のうち占める割合)がそれぞれ異なり、ヒスタミンH1受容体占拠率50%以上が鎮静性50〜20%が軽度鎮静性20%以下が非鎮静性とされています。

図を見てもわかるように第一世代抗ヒスタミン薬は占拠率が高いものが多いです。

高齢者は加齢に伴い身体機能が低下しており、中枢神経抑制作用が転倒やそれによる骨折に繋がることが懸念されます。

そのため、高齢者の服用においては転倒リスクを避けるため、眠気が起きにくい抗ヒスタミン薬を選ぶことが重要になると言えるでしょう。

【文献】抗ヒスタミン薬による眠気と脳内H1受容体占有率の関係とは?

↑ 抗ヒスタミン薬と脳内受容体占有率の関係についてこちらの記事でまとめています。

薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

眠気も起きやすいし、転倒しやすくなるのもなんとなくわかりますね!

まとめ

第一世代の抗ヒスタミン薬の使用は高齢者における転倒や骨折リスクの増加と大幅に関連していた。

薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

やはりというか第一世代抗ヒスタミン薬は高齢者にはできるだけ避けるべきと言えるでしょう。

前立腺肥大や緑内障など、抗コリン作用が問題となるケースも多そうですしね。

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