オススメの本を紹介するTwitterの企画「#読めよ薬剤師」に今年も参加しました。
↓去年の記事はこちらです。
今年読んだ中でオススメの医学書、薬学書、その他色々な本をまとめています(去年まではその年に発売された本という条件がありましたが、今年からは無くなったようなので純粋に今年読んだ本の中で選んでいます)。
企画としては3選ですがオススメしたい本が3選に収まりきらなかったので、それ以外にもいろいろ載せちゃいました。
もくじ
せん妄診療実践マニュアル
せん妄対策のイロハがわかる本。今年読んでいた総時間としては一番多かったかもしれません。
病棟で頻発するせん妄問題に対して何か薬剤師として貢献したいと思ったのがきっかけで、今年は色々せん妄対策について勉強していました。
「日本をリードする岡山大学病院精神科リエゾンチームの診療ノウハウを余すことなく一挙公開」との帯のアオリ文の通り、この一冊があればせん妄対策の予備知識、予防的介入から治療的介入まで一通りの知識を身につけることができます。
診療マニュアルという名前ですが、序文に「医師やメディカルスタッフのためにまとめた超実践的マニュアル」と記載されているように、薬剤師や看護師が読んでも役に立つ知識が満載です。なにより図や表、イラストもたくさんありすごく読みやすい。
フローチャートや処方例も豊富かつクリティカルでとてもわかりやすく、かなり病棟でのせん妄対策に役立てることができました。職場の自分の机にいつも置いてあり、暇を見つけてはよく読んでいます。
せん妄対策に取り組みたいけど何をどうすればいいかわからない、という薬剤師は必読と言えるでしょう。
本書のほかに「せん妄対策 成功への道しるべ」も併せて熟読していました。
これも非常にわかりやすくどちらを選ぶか迷ったのですが、携帯性の面でせん妄診療実践マニュアルのほうが持ち運びやすく職場でも読みやすかったので、3選としてはせん妄診療実践マニュアルのほうにしました。
せん妄診療実践マニュアル サイズ:B6変型判 頁数:197ページ 片手で持てる せん妄対策 成功への道しるべ サイズ:AB判 頁数:136ページ ちょっと大きめ
とはいえ「せん妄対策 成功への道しるべ」も、会話形式でわかりやすくためになるため大変オススメです。こちらは家でよく読んでいました。
副題の「今日の夜からはじめる」は本当で、すぐに使える知識が満載。特にせん妄の薬の5つの作用(各受容体に対する作用)が本当にわかりやすくどうしてそういう作用になるのかきちんと納得できます。
これとせん妄診療実践マニュアルの2冊を熟読すればせん妄に対する知識は間違いなくアップするでしょう。
私のようなせん妄初学者にはどちらも大変オススメです。
よくある疑問にサラリと答える! ここからはじめる抗凝固療法
抗凝固薬ってなんとなく苦手意識があるなあと思い、それを払拭するために購入した本。
結論から言うと、かなり苦手意識を払拭することができたと感じています。
ワルファリンやDOACの特徴、薬物動態やエビデンスなどの基礎知識からはじまり、
「患者の私生活で注意するべきことは?」
「PT-INRが変動しやすい患者のマネジメントはどうすればいいか?」
「ワルファリンの投与設計はどうすればいいか?」
などのクリニカルクエスチョン、はたまたケーススタディで学ぶ各種抗凝固薬の使い方など多岐に渡って詳しく書かれており、抗凝固薬について一通り学ぶことができます。
「こういうときは?」「こうする」とはっきり書かれており、レイアウトもすっきりしていて読みやすいので、私のように抗凝固薬にちょっと苦手意識があるという方はぜひ読んでみてください。
本書を読んでキャラクター化してみたDOACたち。この子たちを使って何回かまとめ画像をTweetしましたが、結構気に入っているのでまた何かで活躍させたいと思っています。
オニマツ現る! ぶった斬りダメ処方せん
全編に渡ってオニマツ先生(オニマツ・ザ・ショーグン:著者の中に棲まうという鬼)がダメな処方箋をぶった切りまくる本。
本屋で立ち読みした際、冒頭の数ページで頓服5回分の処方に対して「普通、錠剤は1シート10錠なんだから10錠とか出せよ(中略)自分でハサミで切れや。5回分って気持ち悪いわ!」とオニマツ先生が言っているのを見て立ち読みながらふと笑ってしまったのをきっかけに購入を決断しましたが、その決断は間違っていませんでした。
(当院にもハサミで切るの大変でしょうと偶数で処方を出してくれる先生が一人いますが、そこを気にしてくれるのは良い先生だと個人的に思っています)
薬剤師同士では処方箋に関してあれこれ議論する機会はそれなりにありますが、医師が他の医師の処方箋に対してあれこれ言っているのは医学書でもあまり類を見ないのでためになり、かつ面白かったです。
バッサリぶった切りすぎていて思わず笑ってしまう箇所もちらほら。楽しく読めるは良きことなり。
ぶった切るだけではなく、その後にきちんとした解説もあるのでちゃんと勉強になります。
ウェス・アンダーソンの風景 Accidentally Wes Anderson
私が愛して止まない映画監督のひとり、ウェス・アンダーソン。
「グランド・ブダペスト・ホテル」「ダージリン急行」「ファンタスティックMr.Fox」など、彼の映画はどのシーンを切り取っても非常に独特かつセンスに溢れていて、まるで絵画のようで、観る者(私)をひと目で魅了し、ずっと眺めていたいと思わされるのですが……
そんなウェス・アンダーソンの映画を観ているような「ウェス・アンダーソンっぽい写真」をこれでもかと満喫できる写真集です。
実書店で偶然見つけて衝動買いしたこの本。最近はもっぱらKindleで本を買うことが多いのですが、リアル書店をふらつくことの楽しさと有意義さを再認識するきっかけとなりました。
ウェス・アンダーソンの映画が好きな人であれば、間違いなく買って損はないでしょう。
私はおそらくこの先ずっと本棚に置いておくと思います。
同名(Accidentally Wes Anderson)のインスタグラムのアカウントがあるので、興味のある方はぜひそちらをご覧になってみてください。
伝え方の処方せん
服薬指導の際の上手な「伝え方」について漫画でわかりやすく学ぶことができる本。
実際に自分も経験して困ったことがある事例や経験したことはないけど遭遇しそうだなと思ったことがある事例などに対して、「こうすればいいんじゃない?」とヤクシー(薬の妖精)が優しく教えてくれます。
薬剤師には当然ということでも患者さんには全然当然じゃないということはたくさんあって、常に患者の立場に立って考える必要があるということを再認識できました。
漫画なのでスキマ時間に気楽に読むことができます。
冒頭のキャラクターの心の声にある「いろいろ学んではいるけど、患者さんに伝えたいことがうまく表現できていない気がする……」みたいに思っている人(私もです)にはいろいろ得ることがあると思うのでオススメです。
頻用薬のこれなんで?
「即崩壊型錠剤とOD錠は何が違うの?」
「メトトレキサートで休薬期間が必要なのはなぜ?」
「プレガバリンはすぐには効かないのはなぜ?」
などなど、日常業務で浮かびそうなクリニカルクエスチョンについてそれぞれ解説してくれる本。
自分では疑問に思わないようなことも「これなんで?」と取り上げられており、ハッとさせられるとともに視野が拡がることうけあいです。
解説も多すぎず、少なすぎずでちょうど良い量。気になったら自分で更に詳しく調べるきっかけにもなります。
私も昔はそんな感じでクリニカルクエスチョンを調べて解消するブログを書いていたのですが最近はお休み気味なのでまた再開したいなあと本書を読んで思ったとともに、常にクリニカルクエスチョンを探し求めることの重要性を改めて感じました。
王様ランキング
耳が聞こえず、言葉も話せない非力な王子が主人公のファンタジー漫画。
何やら面白い漫画があると風の噂で聞いて軽い気持ちで読み始めましたが……ドハマリしました。
まだ全巻読んだわけではないですが、まるで絵本を読んでいるような、それでいて重厚なファンタジー小説を読んでいるような。読み終わった後の満足感がかなり高いです。
キャラクター良し、ストーリー良し、雰囲気良し、絵も良しで、今年新しく読み始めた漫画では間違いなく一番面白かったです。主人公がとても可愛く、応援したくなることうけあい。
アニメも絶賛放映中! とってもクオリティが高くてこちらも毎週楽しみにしています。
グラム染色診療ドリル
グラム染色楽しい! 細菌って面白い! というのを再認識させてくれた本。
書名の通りドリル形式(例→Q:次の写真から推定される微生物はどれか(4択)A:答えと解説)になっており、クイズのような感じで楽しんで読むことができます。
微生物の世界って本当に奥が深くて楽しい……どちらかというと趣味の本として読んでいる自分がいます。
余談ですが抗菌薬ゲーム、少しずつ作っています。
本書や「感染症プラチナマニュアル」、「微生物プラチナアトラス」などを参考に細菌キャラクターを考えています。
(プラマニュは言わずもがな全薬剤師にオススメですし、プラチナアトラスも菌好きな、細菌の勉強をしたい薬剤師にはオススメです。プラチナアトラスはどこかで菌のグラビア写真集だという意見を見ましたが、まさにその通りでした。すごくキレイな写真ばかりで眺めているだけで楽しいです)
ゲームはまだ全然できていませんが、来年中には何とか完成させたいと思っています。
「楽しみながら勉強」というのは結構常に意識していて、私自身も楽しんで勉強することが大好きなので、また来年も思いついたら色々Twitterに投稿していこうと思っています。
来年もなにとぞよろしくお願いします。