ツイッターの企画「#読めよ薬剤師2020」に参加させていただきました。
今年読んだ2020年発売の本で特にオススメなものを3冊挙げています。
見返すと意外とたくさん読んでいて3冊に絞るのが少し大変でしたが、どれもオススメなので何か良い本を探している人がいれば是非読んでみてください。
もくじ
医学論文の活かし方
2020年10月22日発売
色々調べて論文を読み始めた!
楽しい!
これは有意差がある!
つまりこういうことなんだ!
でも……この読み方で果たして合っているのだろうか。批判的吟味と言うけれど……論文でこう書いてるからこう、では駄目なのだろうか。
そんな論文を読み始めてなんとなく論文の作法などが徐々にわかるようになりつつも、身近で論文抄読会など他の人と意見交換する機会が無く、自分の読み方が果たして正しいのか正直よくわからないという人はたくさんいるのではないでしょうか。
かくいう私もそのうちの一人で、論文を読み始めてみたは良いもののTwitterでは何やらレベルの高いやり取りが繰り広げられているし、書いてあることをそのまま受け取るなんて言語道断! みたいなことを言っている怖そうな人もいるし、身近に論文読む人もいないしと、論文を読むことに対して心なしか敷居の高さを感じてしまっていました。
そんなこんなで私の心にある論文部屋のカーテンは一時的に閉ざされて暗闇と化していたのですが、この本に出会いそのカーテンは開き燦然と輝く日の光が入り込むことになったのです。
本書では一つの論文に対して数人の意見が掲載されており、色々な人の論文の読み方・考え方を垣間見ることができます。同じ論文に対しても様々な捉え方をすることができると知ることができます。
特に本の中で「どの考え方が正解」とはしていないところが色々な風に読んでいいんだと背中を押してくれたような気がして、たいへん気が楽になりました。
また誰の意見かというところも明記されていないので、フラットな視点で意見を読むことができるのも良いところだと思います。
普通の抄読会などの場では、本当はそうすべきではないのですが「先輩」や「後輩」「がん専」などどうしてもまず「誰が言ったか」という点に着目してしまいがちです。書籍においてもさらなり。
よくわからないけど、がん専の先輩が言っているのだから正しいんだろうな、とか。おかしいとは思うけれど上司が言っているから意見を言いづらいな、とか。
普段の抄読会でもこの形式で、誰が書いたかを伏せて皆で意見を言い合うようにすればより良い抄読になると思います。是非自施設でも導入したい。
よく言われる「批判的吟味」についても具体的にどのようにすれば良いのかとしゃにむに右往左往していたのですが、本書を通読することでその一定の型というか方向性というのがある程度理解できました。
これなら自分でもできそう、と。
本書を読んでいるとさながら論文抄読会に参加しているかのような、集まって討論しているかのような、そんな気分になることうけあいです。
「1日1論文、30日で薬剤師としてレベルアップ!」の二つ名は決して誇張ではありません。
論文読解の作法が身に付くだけではなく、有名なランドマーク論文の知識も身に付く。そして今後の薬剤師人生にも活かせる。
そんな一石何鳥にもなる本書はレベルアップしたいと考える薬剤師にはうってつけなのではないでしょうか。
全ての薬剤師にオススメできるとても良い本でした。
感じる細菌学×抗菌薬
2020年2月10日発売
すごくオススメだったので、当時読んだあとすぐツイートしていました。
さまざまな細菌の特徴が絶妙なイラストで解説されています。
臨床で即座に役立つというよりは微生物・感染症について基礎から学ぶことができる本という印象です。私は大学時代に微生物学が大好きだったので読んでいてすごく楽しかったです。
見た目的に初心者向けと思われそうですが、ただイラストがかわいいだけではなくて中身はすごくしっかりしてます。著者曰く「本書は最初の一歩を始めるためのもの」とのことですが私は基本以上のことが学べる本だと思いました。
この本の知識を各所に紐付けていけば将来的にはかなり臨床に活かせるということは間違いないでしょう。
1回読んで終わりというよりは手元に置いておいて何回も読み直したくなる感じです。薬学生であればまずこの本を読むとかなり微生物学が得意になるのでは。
感染症が好きな人も得意ではない人も薬学生も、いろんな人にオススメできる本だと思いました。
13歳からのアート思考
2020年2月20日発売
巷で噂のアート思考についての本。
「13歳からの」とありますが、13歳とは美術への苦手意識が生まれる分岐点として著者が論じている仮説に基づくものであり「大人の方にこそ『13歳』の分岐点に立ち返っていただき、『美術』の本当の面白さを体験してほしい」と本書の中で著者が述べているように決して子供向けというわけではなく、ちゃんとした大人向けのビジネス本です。
小学校から中学校に進学する13歳前後を分岐点として多くの人は「自分だけのものの見方・考え方」を喪失しているのだと。
アート思考(Ari thinking)とは一言でいうとアート的なものの考え方のことです。俗に言うアーティストは作品を生み出す過程で①「自分だけのものの見方」で世界を見つめ、②「自分なりの答え」を生み出し、③それによって「新たな問」を生み出しています。
「アート思考」とは、まさにこうした思考プロセスであり、「自分だけの視点」で物事を見て、「自分なりの答え」を作り出すための作法です。
13歳からのアート思考
つまりアート思考とはどういうことか、自分なりの答えを作り出すとはどういうことかを、ピカソを始めとした著名なアート作品の観方を基に解説されています。
読んでいて、なるほど! と思えるところが多く、月並みな表現ではありますが目から鱗が落ちるばかりでした。
自分のものの見方、自分なりの答えを生み出すということ。
これは普段の生活においても常に心がけておきたいですね。
薬剤師生活においても他の人がこう話している、メーカーがこう言っているからこの薬は良い、ではなく自分なりの答えを持つことが重要だなと再認識。
アート思考云々を置いておいても、私は今まで美術館の飾られているようなアート作品はいまいち何が良いのかわからなかったのですが、純粋にその観方、考え方の一端を知ることができたという点だけでも本書は読んで良かったと思える本でした。
おまけ
せっかくなのでその他のオススメの本も載せておきます。
2020年10月発売
先輩にオススメされた日本化学療法学会に入会したら送られてきた本。
まだ全部は読めていないのですが総論と各論で一通り抗菌薬について網羅されていて、本書を何度も通読すればかなりレベルアップできるのでは……という印象です。
しばらく抗菌薬の本は買わなくて良さそう。
http://www.chemotherapy.or.jp/publications/publications.html
↑非会員でも申込みにて購入できるようです。
2020年4月発売
定期的に読まないと禁断症状が出る好きな作家の一人である森博嗣の本。
大勢の方は自分のためにお金を使っていない。誰か人に見せるために使っているのである、と。
森博嗣の独自の考え方はアート思考に繋がるものがありそうな気がします。
2020年7月発売
定期的に読まないと禁断症状が出る好きな作家のもう一人、森見登美彦の本。
映画「サマータイムマシンブルース」と森見先生の小説「四畳半神話大系」がコラボレーションしています。
私は邦画で一番面白いと思っているのが「サマータイムマシンブルース」で、森見先生の本で「四畳半神話大系」が特に好きなのですが、その2つのコラボということでかなり私得な小説でした。
ただただ、ずっと読んでいられます。森見先生の高尚なようで高尚でない文体が大好き。
くだらないこと、どうでもいいことに全力投球する姿勢はいつまでも忘れないようにしたい。
映画は一言で言うと学生ノリでタイムマシンを無駄遣いする話です。
2005年制作と今から15年前の映画ですが、今観てもすごく面白いので未見の方はぜひ。若き日のムロツヨシとかが出ています。
2020年9月発売
今年はデザイン関連の本をたくさん読んだ気がします。デザイナーじゃないのに。
本書は漫画形式でデザインの基礎を学ぶことができる良書でした。
デザインについて学んでおくと例えば症例報告等のスライド作成やDIニュースなどの社内誌作成の際にも「より伝わりやすい」ものを作ることができます。
どんなにすごい内容でもデザインがダメダメだとせっかくの内容が伝わりにくくなってしまうので、どの人も最低限はデザインの勉強をする必要があると考えています。
ある程度勉強したあとに他の人の症例報告のスライドを見ていると、もっとデザインをこうすれば良いのにと思うこともしばしば。
デザインの勉強をしたいけど何からすれば良いのかと思っている人にとりあえず最初に読む一冊としてオススメです。
2020年発売ではないですが、デザイン関連の入門本ではこれがすごくオススメ。
これも2020年発売ではないですが、医療従事者向けに書かれたスライドの見た目の改善に焦点を当てた本でオススメです。とりあえずスライドだけ良い感じにしたいという人はこの本を読むとすぐに結構良い感じにすることができます。
2020年発売のオススメ本を紹介しました。
2020年発売以外の今年読んだおすすめ本はまたいつか別記事にしたいと思います。
今年はほとんど電子書籍で本を読んでいましたね。Kindle unlimitedに登録してみたのですが、色々気軽に読めておすすめです。
kindle unlimited2021年もたくさん本を読んでいきたいです。また、今年はブログをあまり更新できなかったので来年は頑張って書いていこうと思います。
2021年もよろしくお願いします。