初めはよくある自己啓発本だと思っていたのですが、何回か読んだ中で得られたことがいくつかあったので全52の思考法のうち特に印象に残った7つについて紹介します。
もくじ
1.考えるより、行動しよう
とりあえず書いてみる
何を書くかというアイデアは、「考えているとき」にではなく、「書いている最中」に浮かぶ
ロルフ・ドベリ(2019)「Think clearly」サンマーク出版
いきなりですがこれはブログを書く人には知っておいて損はないtipsなのではないでしょうか。何を書こうかあれこれ悩むよりもとりあえず何か書いてみる。書いているうちに書きたいことが泡のようにぷくぷくと頭に思い浮かんでくる。
これは私の好きな作家、森博嗣先生の本の中でも何度か書かれています。
現在の作家の仕事では、文章の途中で終わるとか、次に書くことが頭に浮かんで、それを少し書き始めたところでその日は終了する。すると、翌日は何を書くのか考えなくてもいきなり書き出せる。あとは、書いているうちに思いつく、という具合である。
森博嗣(2017)「夢の叶え方を知っていますか?」朝日新書
とりあえず行動してみる
考えることには限界がある。しかし、時間とともに得られる認識はだんだん小さくなり、すぐに思考は飽和点に到達してしまう。行動を起こさなければ新たな認識は得られないため、人生で自分が何を求めているかを知るには、何かを始めてみるのが一番とのこと。
「やる気は始める前に出ないのは当たり前、始めてからやる気は出るからやる気がなくてもとりあえず始めるべし」という脳科学の専門家が言っているのをどこかで聞いたことがありますがまさにこのことですね。
ぼんやりと考えるだけのほうがたしかに気が楽ですし実際に動かなくてもいいので簡単ですが、行動することで得られることはたくさんある。
「望んでいたものを得られなかった場合に手に入れられるのは経験である」という言葉を様々な人物が用いているそう。
とりあえず忘れてみる?
一方、ジェームス・W・ヤングの「アイデアのつくり方」では次のように記述されています。
この第三の段階にやってくれば諸君はもはや直接的にはなんの努力もしないことになる。諸君は問題を全く放棄する。そしてできるだけこの問題を心の外にほうり出してしまうことである。
ジェームズ・W・ヤング(1988)「アイデアのつくり方」(株)CCCメディアハウス
こちらでは一旦考えるのをやめて忘れることが大切であると、無意識の創造過程が不可欠であると述べられています。
両者は一見正反対のことを言っているように見えますが、個人的にはどちらも納得でき、かつ重要であると感じました。
考えるだけ考えたあとはそれで終わらずとりあえず行動する、行動するのにも行き詰まったら一旦そのことは忘れるということがブログを書くということだけに留まらず、人生の様々な局面において大きな意味を成してくるのではないでしょうか。
13.ものごとを全体的にとらえよう
フォーカシング・イリュージョンとは?
フォーカシング・イリュージョンという言葉をご存知でしょうか。
フォーカシング・イリュージョンとは「特定のことについて集中して考えているあいだはそれが人生の重要な要素のように思えても、実際にはあなたが思うほど重要なことでもなんでもない」という錯覚を表す言葉であるそうです。
つまり、人生における「特定の要素」だけに意識を集中させると、その要素が人生に与える影響を大きく見積もりすぎてしまうと。
そのために俯瞰的に物事を見る、広角レンズを通して自分の人生を眺めること必要であると本書では述べられています。
いま、自分が悩んでいることは全体から眺めるとほんの些細なことでしかないのだと。
これは自分の過去を振り返ってもそうだったなあと思うことがたくさんあります。でもその渦中にいるとなかなか気付けないものですよね。
「心配事の9割は起こらない」でも下のように書かれていました。
私は、禅僧という立場から、たくさんの人から相談を受ける。内容は千差万別だが、大別すれば、不安や悩み、迷いといったものだ。だが、そのほとんどが、実は「妄想」や「思い込み」「勘違い」「取り越し苦労」にすぎないのだ。
枡野俊明(2013)「心配事の9割は起こらない」三笠書房
住職である著者が禅の教えに基づき生活の知恵を教えてくれる本。こちらもおすすめです。
心配事の9割は起こらない: 減らす、手放す、忘れる――禅の教え (知的生きかた文庫)19.SNSの評価から離れよう
自分の内側にある自分自身の基準が大事か、それとも周りの人の基準が大事か。
投資家であるウォーレン・バフェットは上記を「内なるスコアカード」と「外のスコアカード」の違いと表現しています。
「周りがあなたをどう思うか」は、あなたが思っているよりもずっとどうでもいいこと
世間の人々はあなたについて好き勝手なことを言い、あなたに隠れてひそひそ話をしたり、噂話をしたりする。どれも、あなたにはまったくコントロールできないことばかり。だが幸いなことにコントロールする必要もないのだ、と。
これは「嫌われる勇気」でも下記のように表現されていますね。
嫌われる勇気―――自己啓発の源流「アドラー」の教え自らの生について、あなたにできるのは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」、それだけです。一方で、その選択について他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です。
岸見一郎・古賀史健(2013)「嫌われる勇気」ダイヤモンド社
(嫌われる勇気、おすすめです)
「いいね!」の数を必要以上に気にするのはやめよう。誰かの承認を求めるのもやめよう。それよりも自分で何かを成し遂げたり、胸を張れるような生き方をしたりすることに注力しよう、と。
「内なるスコアカード」は常に心に持っていたいですね。一番大事なのは自分自身がどう判断するか、です。
31.性急に意見を述べるのはやめよう
質問には「わからない」と答えていい
- 答えを発信する際、犯しがちな間違い
- 自分が興味のないテーマにも意見を述べてしまうこと
- 答えられない質問にまで発言してしまうこと
- 複雑な質問に、性急な答えを返してしまいがちなこと
考えるテーマはきちんと選んで、それ以外のものは「複雑すぎる質問用バケツ」に入れておくべきと著者は述べています。
複雑な質問の場合には直感的に正しい答えを出せるものではない。ところが私達はそれを正しい答えと勘違いしてしまう。
きちんと考えなければ答えが出ない複雑な質問をされたとき、人は直感で答えを出す傾向がある。そして意見を表明した後ではじめて理性的に考え、自分の立場を裏付ける理由を探し出す。
ジョナサン・ハイト(2011)「しあわせ仮説」新曜社
意見を持たないと何も考えていないと思われてしまうのではと、何か意見を発せねばと思い込んでしまっている節は誰しもあると思います。
ただ最近、ある人が本人の知らないことを聞かれた際に「それについては考えたことがないので意見を持ってないです」とはっきり言い切っているのを聞いて、全くマイナスイメージを持たなかったとともに一種の清々しさを感じ、その人のことが一層信用できると思いました。
もしその人が、わからないのにしどろもどろで意見を言っていたら、信用できなくなっていたでしょう。
わからないことはわからないと言っていいんだ、と。
筆者は本当に自分の意見をつくりあげたいときはどうすれば良いのかという問いに対し「時間をかけて、落ち着いて、自分の考えを書き出してみる」ということを勧めています。
「書く」という行為は、考えを整理したいときの王道だ、と。
その点ではブログは最適ですね。これからも色々書いていきたいと思います。
40.相手の立場になってみよう
できるだけ質の良い小説をたくさん読むべき理由
最近、ビジネス本ばかり読んでいてあまり小説を読めていないですが、筆者は相手の立場に立つためにできるだけ質の良い小説をたくさん読むべきと述べています。
その理由とはいったい何なのでしょうか?
誰かの立場に身を置いて、その人の状況を体験すれば、相手に対する理解が深まる。人生のパートナーや顧客や従業員など、生活における重要なパートナーと実際に試してみるといい。
できるだけ質の良い小説を読むことで、よくできた小説世界に入り込んで主人公の運命のアップダウンを体験するのは、思考と行動の中間に位置する有効な解決策である。
ロルフ・ドベリ(2019)「Think clearly」サンマーク出版
医療従事者に限らず、相手の立場にたって物事を考えるというのは、日常生活において最も大切なことであると私は思っています。
確かに、小説を読むことで自分では想像もしなかったキャラクターの、いわゆる他人の思考や行動原理を知ることができます。
昔読んだ小説のキャラクターの考えについては今でもよく覚えているものです。
しかし、小説に限らずビジネス本などでも他人である筆者の考えを知ることができるため、相手の立場にたつために絶対に小説を読まなくてはいけないと今は強くは思わないですかね。効率という意味で考えれば確かに色々なキャラクターが出てくる小説のほうが一度にたくさんの考えを知ることはできるとは思いますが。
小説、もともと好きなのですがあまり読めていないので、暇があれば読みたいところです。
話は変わりますが皆が皆、相手の立場に立って物事を考えることができれば世の中はもっと平和になるのにとはたまに思ったりします。
世の中の相手の立場にたてない人たちにはこの部分だけでも読んでもらいたいですね。
44.専門分野を持とう
他人のレースで勝とうとしなくていい
職業上の成功を手にするにも社会の豊かさを実現するにも「専門性」は欠かせなくなっている。
自分にできることをただ漫然とするのではなく、自分のできることの中で何に焦点を絞るかを考えることが重要だと筆者は述べています。
私達が生きていくには「その他の専門知識」を持つ多くの人に頼らざるをえないし、その人たちの仕事もまた、「別の専門知識」を持つ人たちとの連携なしには成り立たない
ロルフ・ドベリ(2019)「Think clearly」サンマーク出版
薬剤師界隈で例えるとよくスペシャリストとジェネラリストという2つの言葉が比較され、自分の専門のことしか知らないスペシャリストよりも色々なことに精通しているジェネラリストを目指そうと揶揄されています。
もちろん色々なことにスペシャリスト並に詳しいジェネラリスト、スペシャリストかつジェネラリストが最も求められるということは想像に難くないでしょう。
ただ、果たして日々新しい薬が開発され、日々必要な知識が膨大になってくる中で、そのようなスーパーなマンはどのくらいいるのでしょうか。
本書の記載のように各々が自身の専門知識を持ち、必要な際に別の専門知識を持つ人の力を借りる。
そういう形のほうが色々と都合がいいのではないだろうかと思ったりもします。たくさん勉強するのは大変ですしね。それも一つの薬薬連携と言ってもいいのではないでしょうか。
「これは、自分の専門外のことには目をくれなくていいという意味ではない。類似点のある分野のよい部分は大いに取り入れるべきである」と本書では述べられています。
この国では、同じ場所にとどまりたければ全力で走り続けなければなりません。
ルイス・キャロル「鏡の国のアリス」
ただ、スペシャリストでもジェネラリストでもどちらにせよ、日々勉強、日々走り続けるというのは変わらないです。それが私がブログを始めた理由でもあります。
47.期待を管理しよう
期待値操作とは?
あなたが大きな失望を感じるとき、その原因の多くは期待をきちんと管理できていないことにある。特に周りの人に対する期待だ。周りの人があなたの期待に応えてくれる確率は、天気があなたの期待に応えてくれる確率と同じくらいしかない。
ロルフ・ドベリ(2019)「Think clearly」サンマーク出版
以前とある人が、仕事ができる人とは「期待値操作が上手い人」であると言っており、それを聞いて感銘を受けたのを覚えています。
確かに2日でできる仕事を3日かかると言ってから2日で仕上げるのと、1日でできますと言ってから結局2日かかって仕上げるのとでは、かなり印象が違ってきますよね。
また、思い返してみると職場ですぐ怒ったりする人は、得てして相手に対して設定している期待値が高すぎるのが原因であることに気付きました。
期待値の大きい人は失望しやすいと。
筆者は「期待を0から10の間で評価し、最後に自分が評価した点から2点を差し引く。期待に数値を付ければ何の根拠もないのに感覚だけで期待をつくりあげる無意識の思考を阻止することができる」と述べています。
何でも-2点とするのは日々使えるライフハックかもしれません。
なんにせよ、勝手に期待して勝手に失望するような人にはならないようにしたいですね。
まとめ
いかがでしょうか。
このように人生の役に立つようなtipsが52個も書かれているので、どれかは心に響くものがあると思います。
最後に本書を読んで一番心に残った言葉を書いておきます。
あなたがある鳥の呼び名を世界中の言語で知っていたとしても、あなたはその鳥について何ひとつ知っていることにはならない。(中略)だからその鳥をよく観察して、どんな動きをするかを把握しよう。それが一番大事なことだ。私はごく幼いころに「何かの名前を知っていること」と「何かを知っていること」の違いがわかるようになった。
リチャード・ファインマンの言葉 ロルフ・ドベリ(2019)「Think clearly」サンマーク出版