ビスホスホネートで食道潰瘍はなぜ起こる?

ビスホスホネート製剤はきちんと服用しないと咽喉頭、食道等の粘膜に対し局所刺激症状、食道潰瘍等を引き起こすおそれがあるとのことで、服用に際して

・起床してすぐにコップ1杯の水 (約180mL) とともに服用すること

・服用後、少なくとも30分は横にならないこと

などなど飲み方に関するいくつかの注意事項がありますよね。

しかし、そもそもなぜビスホスホネートで食道潰瘍が起きるのでしょうか?

今回はそんなそもそもなギモンについて調査してみました。

先に少しネタバレすると、その秘密の起源はビスホスホネートの”構造”にあったのです……。

ビスホスホネートで食道潰瘍はなぜ起こる?

食道上皮を保護するリン脂質

食道上皮を保護するホスファチジルコリンというリン脂質があります。

ホスファチジルコリン(英: phosphatidylcholine, PC)とは、グリセロリン脂質の親水部としてコリンがリン酸エステル結合しており、疎水部としてグリセロール骨格に2つの脂肪酸がエステル結合した構造をしている、リン脂質の総称である。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ホスファチジルコリンは粘膜に疎水性、耐酸性を与えることで食道上皮の粘膜保護に関与しています。2)

その構造がこちら。

なにやら構造が副作用発現のキーポイントとなっているようです。

では早速ビスホスホネートの構造も見てみましょう。

ビスホスホネートの構造

ビスホスホネートの構造式はこちら。

見比べてみるとホスファチジルコリンと類似しているのがわかりますね。

プレーリードッグせんぱい
プレーリードッグせんぱい

似てるかな?

薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

Pのあたりとか……

ビスホスホネートで食道潰瘍が起こる機序

ここまでで食道上皮を保護する作用を持つホスファチジルコリンとビスホスホネートが類似した構造を持っていることがわかりました。

さて、このことから何が起きると考えられるでしょう?

体内は意外とアバウトで似ている構造を持つもの同士は混同されて取り違いが起きる……というのは薬剤の作用機序的にはよく聞くフレーズだと思いますが、今回も類に違わずビスホスホネートがホスファチジルコリンを置換してしまいます。インシデントですね。

このインシデントによってリン脂質による粘膜防御機構が破壊されることが、ビスホスホネートで食道潰瘍が起きる原因と考えられています。1)

プレーリードッグせんぱい
プレーリードッグせんぱい

RPGで例えると、良い防具を持っていたのにむりやり防御力の全然ない弱い装備と取り替えられてしまって、今までは大丈夫だった攻撃でも大ダメージをくらってしまうということだね

薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

悲しいですね……

ビスホスホネートでの食道潰瘍への対処法

食道潰瘍は純粋に薬が食道内に滞留することが原因のため、食道で薬が留まらなければ問題ありません。

つまり、患者さんにはしっかりと手順を守って服薬してもらう必要があります。

服薬体位と飲水量による薬剤の食道通過時間に関する検討では、立位での服用は横臥位での服用よりも食道通過時間は短縮し、飲水量が100mlの場合は飲水量が25mLの場合と比較して食道通過時間が短縮するとされています。3)

また、15mlの水を用いてカプセルを服用して服用直後より仰臥位になった場合は、58%の症例でカプセルが5分以上食道に停留したと報告されているようです。4)

そのため特にビスホスホネートのような粘膜傷害をきたしうる薬剤を内服するときは、添付文書に記載されているように十分量の水とともに服用し、服用後は少なくとも30分は横にならないことなど基本的なことはきちんと伝えて必ず守ってもらう必要があるでしょう。

ビスホスホネート間で発生頻度に差はある?

ちなみにビスホスホネート製剤によって、副作用の発生頻度に差はあるのでしょうか?

ビスホスホネート間による粘膜傷害発生頻度の差はリン脂質置換性の差異によるとされ、リセドロン酸は副作用発生頻度が比較的低いと考えられているようです。2)

文献によると、ビスホスホネートの幽門部粘膜に対する毒性はパミドロネート>>>アレンドロネート>リセドロネートとのこと。1)

ただ、発生頻度が低いリセドロン酸でも少なからず食道潰瘍の例が報告されており海外では死亡例もあるようなので、発生頻度の如何にかかわらず服用方法はきちんと守るようにしてもらいましょう。

まとめ画像

参考文献

(1)L M Lichtenberger et al.,Effect of bisphosphonates on surface hydrophobicity and phosphatidylcholine concentration of rodent gastric mucosa ,Dig Dis Sci . 2000 Sep;45(9):1792-801.

(2)三好潤ほか「23. 骨粗鬆治療薬(ビスホスフォネート製剤)内服中に重篤な食道炎・食道潰瘍をきたした1例 」Progress of Digestive Endoscopy 73(2): 126-128, 2008.

(3)H Hey et al., Oesophageal transit of six commonly used tablets and capsules, Br Med J (Clin Res Ed). 1982 Dec 11;285(6356):1717-9.

(4)Evans KT, Roberts GM: Where do all the tablets go? Lancet 2;1237-1239:1976

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