最近、collagenous colitisという言葉をよく聞くようになりましたが、一体どのような疾患なのでしょうか?
- 原因薬剤は?
- ランソプラゾール(タケプロン)で起こりやすい? エソメプラゾール(ネキシウム)では?
- 好発時期は?
- 原因薬剤を服用してからいつごろ発症しやすい?
- 治療方法は?
- 治療薬とかってあるの?
などの疑問に答えるべく文献を基にまとめています。
同じような疑問をお持ちの方はぜひご一読ください。
もくじ
こらげのすこりてす?

これは……collagenous colitis……

こらげのすこりてす?

こらげのす、こりとぅす?

こ、こらげのすざうるす?

ざうるす……?



せんぱい!こらげのすざうるすってなんですか?

こらげ……collagenous colitisのことかな。調べてみようか。
collagenous colitis(CC)とは?
概要
1976年にLindstromによって初めて報告された慢性の水様性下痢を主症状とする大腸の炎症性疾患
慢性下痢を特徴とし、大腸内視鏡検査では明らかな異常所見を認めないが、大腸粘膜生検によって病理組織学的に被蓋上皮直下のcollagen bandの肥厚を認める疾患
Lindstromによる提唱
近年では内視鏡的異常所見を認める報告もある。
lymphocytic colitis(リンパ球性大腸炎:LC)とともにmicroscopic colitis(顕微鏡的大腸炎:MC)と総称される。
疫学
- 欧米における年間罹患率は人口10万人あたり0.3〜6.2人
- 平均年齢65歳
- 男女比1: 7(日本では1:2.3)
- 甲状腺炎、関節リウマチ、乾癬などの自己免疫疾患や慢性炎症性疾患の合併が多いとされる。
症状
難治性持続性の水溶性の下痢
- 約半数の患者で体重減少や腹痛が認められる
- 出血や発熱、炎症反応上昇を伴うことは少ない
- 腹痛、便意切迫、便失禁などによりQOLが障害される
原因薬剤
PPIやNSAIDsなどの薬剤の関与が報告されている
- その他報告のある薬剤
- SSRI
- β-blocker
- アスピリン
- アカルボース
- ラニチジン
- セルトラリン
- チクロピジン
- DOAC など
ランソプラゾール
ランソプラゾールは特に発症頻度が高いとされる。
- PPIにより発症したcollagenous colitisのうち約7割がランソプラゾールを服用していたとの報告あり
- 日本人ではCYP2C19の遺伝子多型が多く(人口の18〜23%)、ランソプラゾールの血中濃度が上昇する一因となる
- 欧米では1〜6%のため、欧米に比べて日本でランソプラゾールによる発症が多い要因と考えられる
- CYP2C19の影響が少ないエソメプラゾールは発症頻度が少ないという報告あり
機序
明らかではないが、大腸上皮細胞に存在するプロトンポンプが、腸管粘膜からの分泌物の組成やpHを変化させ、免疫反応に影響を与えているのではと考えられている。
好発時期
PPIでは服用開始から数カ月後、NSAIDsであれば数年後が多いとされる。
原因薬剤中止後は数日程度で症状の改善がみられる。
治療
薬剤性の場合、関連薬剤の中止が第一選択となる。
薬剤性でない場合や難治性の場合はステロイドが用いられることが多く、欧米ではブデゾニドの有用性が確立されている。
まとめ

日本人ではCYP2C19の遺伝子多型が多いからランソプラゾールで起こりやすいんですね!

まれな疾患ではあるが原因不明の下痢が続いている患者さんがランソプラゾールを飲んでいたらこれを疑って医師に提言してもよいかもしれぬな。

ところでcollagenous colitisってなんて読むんですか?

こ、こらげのす……こりてす……

……(先輩も読めなかったのか)

ちなみに読み方はカタカナで表記するとコラゲナウス・コライティス(koʊlάɪṭɪs)でした!
参考文献
- 武田佳子ほか(2018)「ICUから一般病棟転棟後にランソプラゾールによるcollagenous colitisの発症が疑われた1例」日本病院薬剤師会雑誌 54(4): 423-427
- 松橋信之ほか(2017)「collagenous colitis」消化器内視鏡 29(1): 134-139
- 池本珠莉ほか(2017)「新規経口抗凝固薬(novel oral anticoagulants ; NOAC)が原因と考えられたcollagenous colitisの1例」日本消化器病学会雑誌 114(3): 456-463
- 蔵原晃一ほか(2017)「薬剤性大腸炎(NSAIDs,抗菌薬,PPIなど)」消化器内視鏡 29(8): 1514-1520
- 大月康弘(2014)「ランソプラゾールが原因と考えられたcollagenous colitisの1例」倉敷中央病院年報 77: 123-126