バルプロ酸とカルバペネムが併用禁忌なのは有名な話だと思います。
しかし「併用するとどのくらい良くないのか」即答することはできますか?
今回はそのような疑問に答えるべく
「バルプロ酸とカルバペネムは併用禁忌だけど実際併用するとバルプロ酸の血中濃度はどのくらい下がっちゃうの? 」
という論文のビジアブ(ビジュアル・アブストラクト)を描いています。
「じゃあどうすればいいの?」
についてもまとめています。
もくじ
カルバペネムを併用するとバルプロ酸の濃度はどのくらい下がる?

あっ、この人デパケン飲んでるのにメロペン処方になってる!

疑義照会しなきゃ!

るるるるる、るるるるる

はい、おおわしです

6病棟のねこ山ねこ太郎さんのメロペンなんですけど……
デパケン飲んでるのでカルバペネムは併用禁忌です!

お、そういえばそうだったね。なんでなんだっけ?

え、ええと(なんでだっけ?)
たしか……デパケンの濃度が下がってしまうから、だったと思います(たぶん)

どのくらい?

どのくらい?! えっと……

かなり、ですかね……

……(かなり?)

えー、じゃあどうすればいいかな?
ESBL産生大腸菌なんだよねー

むむむ……(わからん)

折り返します!

一体どのくらい血中濃度が下がってしまうというのか……

お、どうしたんだい?

せんぱい! かくかくしかじかで困っちゃって……

ふむ、では調べてみようか
論文:バルプロ酸の血中濃度におけるカルバペネム系抗菌薬(エルタペネム、イミペネム/シラスタチン、メロペネム)の影響
文献概要
Ther Drug Monit, 38 (5), 587-92 Oct 2016
The Effect of Different Carbapenem Antibiotics (Ertapenem, Imipenem/Cilastatin, and Meropenem) on Serum Valproic Acid Concentrations
Chien-Chih Wu 1, Tsung-Yu Pai, Fei-Yuan Hsiao, Li-Jiuan Shen, Fe-Lin Lin Wu
- PMID: 27322166
- DOI: 10.1097/FTD.0000000000000316
ビジアブ(ビジュアル・アブストラクト)


エルタペネム……知らない子ですね

日本では未発売のカルバペネム系抗菌薬のようだよ

併用しちゃった例が52例もあったんですね

除外規定が3つあるから実際はもっと多かったんだろうなあ
まとめ・感想

結構下がるんですね! メロペネムの67%とかそーとーですね!

うむ、これは由々しき事態であるなあ

イミペネムよりメロペネムのほうが有意に減少幅が大きいとのことですけど、結局どっちでもバルプロ酸の血中濃度は治療域以下まで下がっちゃうみたいですね。

筆者らの言うように併用は避けるべきであろう

あと、どうすればいいかですけど、そういえば前のブログでどうすればいいかについてまとめてたのを思い出しました。

僕、これに併用すると20%程度に低下するって書いてますね……そして後ろ向き研究の60%低下っていうのは多分この論文のことですね……

貴君は忘れっぽいなあ(笑)

まあ、それは置いておいて僕が以前書いたように
①カルバペネムを別の抗菌薬に変える
②バルプロ酸を別の抗痙攣薬に変える
③TDMしながらバルプロ酸を継続使用する
のどれかでしょうか?

バルプロ酸の使用目的がてんかんでなければカルバペネム使用中はバルプロ酸を一旦中止するというのも選択肢として挙げられそうですが、今回はてんかんだったので中止はしないほうが良さそうです。
③は大変そうなのと、この論文に併用中はバルプロ酸の血中濃度が治療域まで上がらなかったって書いてたので、しないほうが良さそうですね。

そうかもなあ。カルバペネムは何に使っているのであろうか?

ESBL産生菌って言ってました! この前記事を書きましたよ!

うーむ、セフメタゾールじゃだめですかね……? ちょっとその線で聞いてみます!

とるるるるる、るるるるるる

はい、おおわしです

かくかくしかじかで……セフメタゾールを使うのはどうでしょう?

ほう、軽症で臨床症状も安定してるし、じゃあセフメタゾールにしてみようかな

おねがいします!

少年よ、ありがとう☆

なんとかなりました!

良かった良かった。しかし疑義照会するときは疑義の理由と代替案は考えておかねばならぬな。

そうですね! 次からは即答できるようにします!!
文献リンク
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