光線過敏症について薬剤師が知っておきたい9つのこと

オータム
オータム

こんにちは。最近あまり記事を更新できていないことでおなじみ病院薬剤師のオータムです。

ケトプロフェンテープで有名な光線過敏症。

実はケトプロフェン以外にも光線過敏症を起こしうる薬剤はたくさんあります。服薬指導のときに伝えなければいけないポイントもたくさん。

そんな光線過敏症について、薬剤師が知っておきたい9つのことについてまとめました。

こんな人に向けて記事を書いています

光線過敏症についてあまり知らない薬剤師、医療従事者、薬学生など

光線過敏症についてざっくり知りたい人は本文を読んでみてください。

私はこんな指導をしている、ここも注意が必要などなど、コメント・感想もお待ちしております。

光線過敏症について薬剤師が知っておきたい9つのこと

1.光線過敏症とは

人に投与された特定の薬物が紫外線と相互作用を起こした結果、皮膚組織に到達し光毒性反応や光アレルギー性反応を起こす疾患のこと[9]

2.分類

内服薬や注射剤によるもの

  • 光線過敏型薬疹
  • 薬剤性光線過敏症

外用薬や貼付剤によるもの

  • 光接触皮膚炎

3.原因

  • 可視光線(400-800nm)
  • 紫外線A波(UV-A320-400nm)
  • 紫外線B波(UV-B280-320nm)

いずれかによって症状が現れる

原因となる波長を作用波長と呼ぶが、光線過敏型薬疹の多くはUV-Aが作用波長であることが知られている(UV-Aのほうが皮膚深くまで到達しやすいため)。

4.機序

光毒性

クロモフィア(光を吸収する物質)である光線を吸収する構造を持つ薬剤が、作用波長の光線照射を受けることで不安定な励起状態になり、細胞の構成成分や巨大分子を破壊してケミカルメディエーターの放出を促し炎症が起こる。

光毒性反応は原因物質が大量に必要であり、症状が出るまで数分から数時間かかり、サンバーン用の浮腫性紅斑を起こすことが多い[9]。

ケトプロフェンは照射時にin vitroでDNA損傷を誘発する可能性がある[3]。

光アレルギー性

励起された原因物質がハプテンとなり表皮のランゲルハンス細胞表面にある蛋白に共有結合し、抗原として提示される免疫反応が起こることにより光線過敏症として現れる。

通常の抗原とは異なり抗原となるには紫外線照射が必要であり、被覆部でも衣服を透過するわずかな紫外線によって発症することもある[9]。

免疫学的反応を伴う細胞が介在する過敏反応に起因するため、以前に感作した人にのみ起こり、感作の潜伏期間を必要とする[3]。

症状が出るまで数時間から1年以上とされるが、1〜6ヶ月の症例が多いとされる[9]。

5.症状

軽度の痛みから重度の水ぶくれ(紅斑、丘疹、水疱)まで、症状や重症度にはかなりの差がある[7]。

これらの症状は薬剤の種類、皮膚での沈着部位、吸収波長の影響を受ける[9]。

6.原因薬剤

報告の多い薬剤一覧

  • 抗菌薬
    • ニューキノロン系
    • テトラサイクリン系
    • イソニアジド
  • 消炎鎮痛剤
    • ケトプロフェン
    • ザルトプロフェン
    • ピロキシカム
    • アンピロキシカム
    • ジクロフェナク
  • 利尿薬
    • ヒドロクロロチアジド
    • フロセミド
    • トリクロルメチアジド
  • Ca拮抗薬
    • ジルチアゼム、ニフェジピン、ニカルジピン
  • スタチン
    • シンバスタチン、プラバスタチン
  • 気道潤滑薬
    • アンブロキソール
  • 抗ヒスタミン薬
    • メキタジン
    • プロメタジン
    • シプロヘプタジン
    • ジフェンヒドラミン
  • 抗癌剤
    • BRAFキナーゼ阻害剤(ベムラフェニブ、ダブラフェニブ)
    • EGFR阻害剤
    • VEGFR阻害剤
    • MEK阻害剤
    • Bcr-Ablチロシンキナーゼ阻害剤
  • その他
    • クロルプロマジン
    • カルバマゼピン
    • ボリコナゾール
    • ジブカイン
    • クロレラ
    • センノシド
    • アフロクアロン
    • アミオダロン
    • ARB
    • ピルフェニドン

など

Nakaoら[2]の報告の中から現在でも用いられる頻度が多いものを抜粋するとARB、ヒドロクロロチアジド、NSAIDsが多く、特にARBとヒドロクロロチアジドの合剤は極めて報告数が多い[10]。

チアジド系利尿薬(ヒドロクロロチアジド)

チアジド系利尿薬の中ではヒドロクロロチアジドが原因薬剤として最も多い。

「2011年12月までに発表されたチアジド系薬剤による光過敏症の全症例をレビューした。その結果、女性33例、男性29例の計62例が確認された。症状としては、光分布パターンの湿疹性病変が最も多く、原因物質としてはヒドロクロロチアジドが最も多かった[6]」

プレミネント、エカードなどヒドロクロロチアジドの合剤が近年よく使用されることにより、光線過敏症も見られるようになってきている。

日本の有害事象報告書(JADER)データベースに記録された薬剤性光線過敏症の報告を分析した結果、ロサルタン/ヒドロクロロチアジド、バルサルタン/ヒドロクロロチアジド、ケトプロフェンの報告オッズ比(95%信頼区間[CI])は、それぞれ214.5(162.1~283.9)、104.7(66.3~165.5)、117.9(76.6~181.5)であった。

また、ロサルタン/ヒドロクロロチアジド、バルサルタン/ヒドロクロロチアジド及びケトプロフェンによる薬剤性光線過敏症発現までの期間の中央値は、それぞれ56日(41~78日)、49日(38~88日)及び8日(2~14日)であった[2]。

薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

チアジドで薬疹が起きたときに「むむ、これは……光線過敏症!」ってなるのはなかなかレベルが高そうな印象がありますね

プレーリードッグせんぱい
プレーリードッグせんぱい

可能性があるということを知っておくことは大切であるなあ

ケトプロフェン

ケトプロフェンのこのような有害反応の頻度が高いのは、その化学構造と光毒性効果をもたらす様々な化学反応によって説明できる。

Finally, the higher frequency of such adverse reactions with ketoprofen could be accounted for by its chemical structure and the variety of chemical reactions that give rise to phototoxic effects.

Drug Saf 2000 May;22(5):339-49.

ケトプロフェン中のベンゾフェノン骨格が光増感剤として光線過敏症発症の大きな役割を果たしている。

ケトプロフェンはベンゾフェノン骨格または抗原決定基であるベンゾイル基を有しており、第一段階の過程として、構造中のカルボニルの酸素原子の非共有電子対の電子の一つが励起し結合が切断され、励起状態となった中間体が生体成分と結合しアレルゲンとなり、ランゲルハンス細胞の抗原提示を活性化させることで光アレルギーを発症すると考えられている[9]。

同様にベンゾフェノン骨格を持つフェノフィブラートオクトクリレンなどいくつかの薬剤がケトプロフェン誘発性光線過敏症の悪化や交差反応と関連していることが報告されている[4]。

これらの薬剤を広く繰り返し使用することで、感作を引き起こし、経口NSAIDsや交差反応を引き起こすことが認められている他の薬剤との全身性アレルギー反応のリスクが高まる可能性がある[3]。

ピルフェニドン、ベムラフェニブ

肺線維症治療薬のピルフェニドンは国内臨床試験で51.7%、抗悪性腫瘍薬のベムラフェニブは海外および国内臨床試験で46.0%に光線過敏症が発現したとの報告がある。

オクトクレリン

日焼け止めに含まれているが皮膚炎を悪化させる可能性が指摘されている。

7.貼付剤による光線過敏症

日光はダメ! ゼッタイ!

数週間から数カ月後でも日光が当たると皮膚炎が起こることがあるため、長期の遮光が望まれる。

使用をやめた後も最低4週間は紫外線を当てないように注意が必要であり添付文書にも記載されているが、これは貼付により薬剤が真皮に浸透して長時間滞留していると考えられるためである[9]。

曝露を繰り返したり、他の疾患と間違えられ紫外線治療を受けたりして重症化すると慢性の潰瘍となり極めて難治性になる例もある[9]。

また、ケトプロフェンは光線過敏症の既往歴がある患者には「禁忌」であり、 他剤への変更が必要である。

薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

貼ってるときだけ注意しなければならないと思っている人は多いと思うので、注意喚起が必要ですね。

プレーリードッグせんぱい
プレーリードッグせんぱい

数ヶ月も残るとか知らないと思いもよらないので注意喚起はたいへん重要であるよ

8.治療

原因薬剤の中止

薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

当然ですが、原因薬剤は中止が望ましいですね!

外出の際の遮光

長袖、長ズボン、手袋、サングラス、日焼け止め(SPF50+、PA+++)など

患者が日光から注意深く身を守れば、光感受性薬を含む治療を中止する必要はないことが多い。

If patients carefully protect themselves from the sun, it is often not necessary to stop treatments that include photosensitive drugs.

Acta Clin Croat. 2017 Jun;56(2):277-283. 

白い生地や薄手の服は紫外線を透過させる恐れがあるので、紫外線を透過させにくい色物の衣服などを着用するよう注意喚起されている[11]。

皮疹に対しての治療

ステロイド外用剤を用いる

中止できない場合

内服タイミングを夕食後にすることで軽減するとの報告も一応あるとのこと。

9.服薬指導のポイント

光感受性の可能性のある薬剤や治療薬を長期的に使用している患者には、皮膚へのこれらの副作用の可能性を警告し、日光への直接の曝露を避け、十分な光保護剤を使用するように助言すべきである

Therefore, patients who use potentially photosensitive drugs and treatments on a long term basis should be warned of the possibility of these side effects on their skin and advised to avoid direct exposure to sunlight and to use adequate photoprotection.

Acta Clin Croat. 2017 Jun;56(2):277-283. 

まず、紫外線に当たりやすい部位には貼付しないような指導が必要。

指導例([10]を参考)
  • 日傘や帽子、長袖長ズボンの着用
  • 紫外線を透過させにくい色物の衣服の着用
  • サンスクリーン剤の使用
    • 規定量を全体に伸ばし、3時間に1回くらい塗り替える。胸、首、手の甲など塗り忘れやすい部位にもきちんと塗るよう指導
薬剤師うさぎ
薬剤師うさぎ

光線過敏症を避けるためにも薬剤師としてきちんと指導することはとっても重要ですね!

プレーリードッグせんぱい
プレーリードッグせんぱい

ぬかりなくすべからく指導すべし……!

まとめ

  • 光線過敏症とは、人に投与された特定の薬物が紫外線と相互作用を起こした結果皮膚組織に到達し、光毒性反応や光アレルギー性反応を起こす疾患のこと。
  • 起因薬剤によって光線過敏型薬疹、薬剤性光線過敏症、光接触皮膚炎などに分類が分かれている。
  • 光線過敏型薬疹の多くはUV-Aが作用波長であることが知られている。
  • 発症機序は光毒性光アレルギー性の2つに大別できる。
  • 軽度の痛みから重度の水ぶくれ(紅斑、丘疹、水疱)まで、症状や重症度にはかなりの差がある。
  • 原因薬剤にはARB、ヒドロクロロチアジド、NSAIDsが多い。
  • ケトプロフェン貼付剤は使用をやめた後も最低4週間は紫外線を当てないように注意が必要。
  • 治療の基本は原因薬剤の中止と遮光!
  • 薬剤師として服薬指導で十分な指導が必要!

参考文献

  1. 藤山俊晴(2020)「第3回 光線過敏型薬疹」調剤と情報 26(1): 102-106
  2. Nakao S et al, Evaluation of Drug-Induced Photosensitivity Using the Japanese Adverse Drug Event Report (JADER) Database, Biol Pharm Bull. 2017;40(12):2158-2165 PMID: 29199239 
  3. H Bagheri et al, Photosensitivity to ketoprofen: mechanisms and pharmacoepidemiological data, Drug Saf 2000 May;22(5):339-49. PMID: 10830251 
  4. Tiffany Yvonne Loh, Philip R Cohen , Ketoprofen-induced photoallergic dermatitis, Indian J Med Res. 2016 Dec;144(6):803-806.  PMID: 28474616 
  5. Liborija Lugović-Mihić et al , Drug-Induced Photosensitivity – a Continuing Diagnostic Challenge, Acta Clin Croat. 2017 Jun;56(2):277-283.  PMID: 27638435 
  6. S Gómez-Bernal et al, Photosensitivity due to thiazides, Actas Dermosifiliogr. 2014 May;105(4):359-66. PMID: 23664250
  7. S Khandpur, Drug-induced photosensitivity: new insights into pathomechanisms and clinical variation through basic and applied science, Br J Dermatol. 2017 Apr;176(4):902-909. PMID: 27510322 
  8. 豊田紗和子ほか「薬物性光線過敏症と紫外線可視吸収スペクトルと構造の関連」医薬品情報学 21(2): 70-78, 2019.
  9. 今福信一「皮膚疾患 日焼けと光線過敏症」臨牀と研究 96(7): 803-807, 2019.
  10. 田中尚美, 堀美智子「第14回 日差しが強まる季節は光線過敏症に注意」調剤と情報 24(9): 1379-1384, 2018.
  11. 厚生労働省、重篤副作用疾患別対応マニュアル「薬剤による接触皮膚炎」

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