薬ってたくさん種類があるけれど、どれとどれがどう違って、それぞれにどんな特徴があるんだろう。似たようなものが多くて難しいなあ。
薬について最初に勉強しはじめたとき、そんな風に思ったことのある方もいるのではないでしょうか。
そんなときに役立つのは、そう! まごうことなく「擬人化」ですね。今回紹介する書籍「イラストでつながる薬のはたらき 」は世に数多ある擬人化コンテンツの中でも、薬の擬人化本の新定番となりうるポテンシャルを秘めた書籍です。
今回、著者の方より本書をご恵贈いただいて通読したので、レビュー記事を作成しました。忖度無しに率直な感想を記したため、内容が気になっている方はぜひご一読ください。
もくじ
【書評】「イラストでつながる薬のはたらき」イラストを読み解けば薬がわかる!薬擬人化本の新定番
- タイトル:イラストでつながる薬のはたらき
- 著者:はっしー 編著:木元貴祥 イラスト:くすり子
- 出版社:KADOKAWA
- 定価:1,980円
- 発売日:2026年4月15日
1.結論:この本を一言で言うと?
本書のことを一言で表すと、まさに「王道の擬人化本」でしょう。
私自身もInstagramで薬の擬人化漫画を更新していたり、月刊誌で薬の擬人化連載をしていたりしたことがある薬擬人化狂人なので、本書はとても興味深く通読することができました。
「薬について興味はあるけど、カッチリした本で勉強するほどではない」という非医療従事者の方、「薬を勉強したいけど教科書はしんどい」という医療職・医療系学生の方の最初の一歩として。また、薬を嫌がる子どもに対して親御さんが優しく説明できるツールとしても活用できると思います。
2.この本が生まれた背景と信頼性
「薬の勉強は難しい」という入口にあるハードルをイラストの力で極限まで下げようという一冊。単なる擬人化本ではなく、キャラクターに散りばめられた「暗号」、アイテムや数字、アルファベットなどを読み解きながら、薬の作用機序・副作用・注意点などが自然と頭に入る設計になっています。
著者のはっしーさんと木元さんはそれぞれ以前共著で医学書を出版した方(下記リンク参照)で、イラストのくすり子さんも薬剤師・イラストレーターとして活躍されている方です。
はっしーさんは「ナースのメモ帳」という看護師さんが最初に知っておきたい情報をまとめたシリーズを出版していますが、本書はさらにそれよりも前に知っておきたい情報がまとまっているという位置づけの印象ですね。
また、薬の擬人化イラストを薬剤師が描いているというのが他書との大きな差別化要因であり、擬人化コンテンツとしての信頼性を担保していると言えるでしょう。
3. 本書の構成と学習のロードマップ
一薬剤につき見開き2ページで完結。右ページに擬人化イラスト、左ページに薬の解説文。まず絵を眺めてざっくりつかみ、次に本文で照合する「見る→読む」の2ステップが一貫していて、初学者が迷子にならない構成です。
イラストもかなり描き込まれていて、もはや医学書というよりは画集と言っても過言ではないかもしれません。さながら美術館。美術館で絵画を鑑賞した後に、隣にある説明文を読んで理解するといった「鑑賞」するイメージが近いです。
まずはイラストを眺めてみましょう。細部にあるいろんなことに気付いて新たな発見があるかもしれませんよ。
4.ここがスゴイ!3つの魅力
イラストに情報が埋め込まれていて、見ていると自然に知識が構造化される。これは実はわりと難しくて、擬人化本でありがちな「かわいい絵に説明テキストを添えた本」とは差別化されています。
上述したようにイラストを描いているのが薬剤師という点が本書における独自のクオリティを生み出していて、制作者とイラストレーターさんが違うとどうしても細部の意図が伝わらなかったり、ちょっと意図と違う形でイラストになったりすることもあるかと思うのですが、その懸念も両者が一体化していることで払拭されています。
擬人化イラストがメインで、説明はちょっとだけなのでは?と思う方もいるかもしれません。しかし、そこは多すぎず少なすぎずで必要十分な解説が書かれているので、その薬に関してしっかりと知識を得ることができます。
各章の末に掲載されているコラムはどれも興味深く、誰かに話したくなることうけあいです。「インスリン発見の歴史」や「胃がん予防のためのピロリ菌の除菌」など身近でありながら大事なテーマが取り扱われています。
5.「やり込み要素」:読了後の広がり
ゲームではストーリーをクリアしたあとのやりこみ要素が大事ですよね。本書でもそれになぞらえると、通読した後のやりこみ要素としては「自分でも薬を擬人化してみる」というのがオススメです。
本の中でも多彩なイラストで表現されていたように、どんな薬でもそれぞれの個性があってそれぞれ違う擬人化をすることが可能です。この本のイラストはあくまでも一例です。本書に載っていなかった薬に関しても、自分で薬の特徴を学んで、その特徴を基に擬人化を考えてみるのも楽しいですし、その過程でその薬に関してかなり詳しくなれることと思います。
つまり、自分で擬人化するのが一番勉強になるといっても過言ではありません。学生時代に人が書いたまとめノートを見るより自分でまとめるほうが勉強になるのと一緒ですね。イラストを描けなくても、生成AIに特徴や容姿のイメージを伝えて、自分オリジナルの擬人化キャラクターを作ってみて、自分だけの擬人化本を作ってみるというのも一興でしょう。
ぜひ、擬人化できたらSNSに投稿してみてください。擬人化界隈を活性化させましょう。
6. 事前に知っておきたい注意点など
本書は薬剤師や医師がゼロから学ぶ本ではなく、あくまではじめて薬に触れる人向けの入門書。普段から薬に触れている医療従事者が臨床の細かい使い分けを学ぶ用途には向きません。
すでに一定の知識のある人がさらなる知識の向上を求めて手にするとミスマッチが起こり得る点には注意が必要でしょう。対象読者を間違えなければ、これ以上ない入口の一冊です。
7. まとめ:この本はどんな人におすすめ?
冒頭でお伝えしたように、また筆者がまえがきにも書いているように、本書はこれから医療を学ぶ方がイラストを見ながら楽しんで覚えることができる一冊です。
薬の擬人化本の新定番として、長く親しまれる書籍になるのではないでしょうか。
購入リンク
編集後記
ここまで読んでいただきありがとうございました。
最近は私も本の執筆をさせていただくことがあるので、どうしても制作者目線で本を読んでしまいます。Xで制作者の方が2年かかったとポストしていたのですが、いや〜実際この本を作るのは大変だっただろうなあと思います。
前述したように、全ての薬(64個)にイラストが付いていて、よくある擬人化本だとキャラクターのイラストが白背景に載っているだけというパターンが多い一方で、本書はキャラクターにいろんな特徴が詰め込まれているだけではなく背景もきちんと描き込まれています。
私もたまにイラストを描く身として、その労力を思うと震えました。以前月刊誌で薬の擬人化イラストを描いていたときは1か月に1枚(ほぼ背景は白)描くのがギリギリで毎回涙目になっていたので、私だったら2枚ほど描いたところで「このクオリティであと62枚も?!」とその大変さに恐れおののき、即座に大幅な方向転換の打診をしていたでしょう。無論、背景は真っ白で、シンプルなキャラクターだけの方向に。それでも1か月に1枚として5年はかかったことでしょう。
そんななか「できらあ!」と完遂してのけた制作者の方々には尊敬の念を抱きました。痺れる憧れる。そんな感じで制作者のアツい魂が伝わってくる本書、ぜひその魂をいろんな人に感じてもらえたらと思います。

