とある休日、Twitterで新人薬剤師さんの職場でのパワハラがつらいというツイートを見て、私も新人時代を思い返していました。
飛び交う怒号、宙を舞う処方箋。
そんな新人にとってはとても良いとは言えない環境下で、入職当時10人以上いた同期は次々に辞めていき、3年経ったときには既に半分以下になっていました。
私がその中でどのように考え、どのように毎日を過ごしていたのか。
私は5年目にその病院から離れ、今は違う病院で働いています。決してパワハラが嫌になったとかではなくただの個人的な理由であり、当時の職場では多くの方々にとても良くしていただいて大変感謝しています。
ただ、新人の頃には私を含め私の同期は程度は違えど少なからず皆つらい思いをしていたというのは上述した辞職者数からもわかるように紛れもない事実です。
世の新人さんにとってその体験が少しでも参考になればと思い、当時感じていたこと、いま当時について思っていることを記事にまとめてみようと思います。
- 新卒で入ったけどすでにもうつらい……
- パワハラに悩まされている……
- 職場を辞めようか迷っている……
このように考えている方がいたら、ぜひ読んでみてください。
もくじ
仕事がつらいというひとに
仕事がつらいという人の仕事がつらい原因はほぼ全てが人間関係によるものでしょう。
オーストリア出身の心理学者であるアルフレッド・アドラー(1870~1937)も「すべての悩みは対人関係の悩みである」と言い切っています。
職場には様々な人がいるので、人間関係は切っても切れず常につきまとうこととなります。
嫌でもひとまずは真っ向から向き合わねばなりません。
パワハラをする人がどのように考えているのか。その思考回路を思い浮かべることで「納得」はできなくても、その人に対していくらか「理解」をすることはできるかもしれません。
一応、少し考えてみましょう。
「〜ができないの?」「〜も知らないの?」というような怒り方をする人は、単純に期待値操作ができていない・下手なだけのことが多いです。
あなたが大きな失望を感じるとき、その原因の多くは期待をきちんと管理できていないことにある。特に周りの人に対する期待だ。周りの人があなたの期待に応えてくれる確率は、天気があなたの期待に応えてくれる確率と同じくらいしかない。
ロルフ・ドベリ(2019)「Think clearly」サンマーク出版
以前とある人が仕事ができる人とは「期待値操作が上手い人」であると言っており感銘を受けたですが、反対に職場ですぐ怒る人は得てして相手に対して設定している期待値が高すぎる、すなわち「期待値操作が下手」なのが大きな要因を占めていると言えるでしょう。
何でも自分を基準に考えてしまうため、自分ができることは相手も当然できる・当然知っていると思ってしまう。
相手が新人だとしても、です。
勝手に期待値を上げて、勝手に失望して、身勝手に怒ってしまうと。
また、目的論的に考えると、怒る人は何か相手に原因があって怒るのではなく「ただ怒りたい」から怒っていると考えることができます。
そういう上司は「〇〇だから仕方なく怒っているんだ」と言いますが、そうではなく「怒りたいという目的が先にあって、〇〇という理由を作り出している」のだと。
怒りたい理由はわかりませんが、ストレスを発散させたいだとか、怒りで相手を屈服させたいだとか、身勝手な理由でしょう。
だって、落ち着いて考えると人に物事を伝えるのにわざわざ「怒る」必要はないですもんね。人間には「言葉」があるのですから。
そう考えると怒るという行為はなんだか動物的だなあと、あー上司もストレスがあってとにかく怒りたいんだなあと、同情のような気持ちが芽生えるようになります。
どうでしょう?そんな人のためにこっちが心を悩ませるのはなんか馬鹿らしくなってきませんか?
仕事がつらいというひとがすべきこと
そんなこといってもつらいものはつらい。
そうですよね。では実際に職場でどうすればせめてものつらさの改善に繋がりうるのか。
ありきたりかもしれませんが私の実例を基にいくつか挙げてみます。
パワハラをするような上司がいたとしても、決して職場全ての人がそうだとは限らないと思います。
年の近い先輩の中には優しい人もいるはずです。
そういった先輩に相談しましょう。先輩も同じように新人時代にはつらく思っていたかもしれません。
ただ、表面上だけ優しいという人も中にはいるので、相談すべき真に優しい先輩の見極めは慎重に行きましょう。
表面上だけ優しい人はあまり力になってくれませんが、真に優しい先輩は必ずや力になってくれるはず。
また、あなたには同期はいますか?同期がいればそれは一番信頼すべき、頼るべき存在です。
私は前述したように同じ職場に同期が10人以上いたので、彼ら・彼女らにはすごく救われていました。もはや同僚というよりは同じ戦場を生き抜く戦友のような存在だと勝手に思っていました。
そのため一人、一人と辞めていくたびに、戦友を失ったような、かなり悲しい気持ちになっていたのですが……。
とにかく彼ら、彼女らも間違いなく同じような気持ちを抱いているはずです。一人で抱え込まず何でも話し合いましょう。
同じように思っている人がいるという事実だけでも、かなり救いになるはず。
職場に同期も優しい先輩もいない?
それはおつら、それはかなり苦しいと思います。心中お察しします。
パワハラをするような魑魅魍魎ばかり跋扈しているのであればそんな職場に未来はありません。辞めてしまって問題もないと思います。
すっぱり辞めましょう。
休憩時間や業務後に同期や優しい先輩と話すことで気が楽になるのはわかったけど、実際につらいのは上司と対面する業務中なんだよなあ。
そうですよね。同じ空間にいるだけで動機や息切れが起こる。嫌な時間はなんであんなに長く感じるのでしょう。
その対策としては、相手を変えることはできないので、もはや自分の考え方を変えるしかありません。
実は以前にも同じようなことを思い、こんな記事を書いていました。

以下、記事より少し引用します。
「人間関係に困って心が折れそうなとき、メンタルがやられそうになったとき、どうするか?答えは簡単です。まず、本を読むべきです。世の中にはたくさんの本があります。そういった状況に対して手助けをしてくれる本も数え切れないほどあります。ちょっと考え方を変えるだけで、新しい考え方を知るだけで、状況が改善するということは多々あると思います」
上述した「怒りたいという目的が先にあって、〇〇という理由を作り出している」というのはアドラー心理学の本から学んだ目的論的な考え方です。
これは本を読むまでは思いもしなかった考え方でした。
その他にも世の中には本がたくさんあります。ビジネス本や自己啓発本は様々な気付きを与えてくれます。
自己啓発本などは読まずに忌避する人が多い印象を受けるのですが、本当に怪しい本はともかく、たった1000円ちょっとで良かれ悪かれ新しい考え方を知ることができ、それによって現状を打破することができるかもしれないって素晴らしいと思いませんか?
何もせずただ現実を悲観して塞ぎ込むよりはよっぽど建設的です。
愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ
オットー・フォン・ビスマルク
特に新人へキツく当たることからも明白なのですが、パワハラをするような人(愚者)は大体自分の経験(経験年数)でしか優位性を保つことができません。
本を読む(歴史に学ぶ)ことで色々な考え方を知れば、上司の言うことの捉え方が変わり、そんなに以前よりつらく感じなくなるかもしれません。矮小すぎて歯牙にもかけなくなるかもしれません。

とりあえずこの記事で挙げた3冊はどれも自信を持ってオススメできる本なので、未読の方は是非。
これは新人さんにとってはどうしても短期的には難しいと思うので、居続けることを決意した上での中長期的な対策です。
マウントを取りたがる人というのは上述したように自分の経験から得た知識によるマウントを取りがちです。
職場のルールだったり、自分の得意分野の知識だったり。
そういった人を黙らせるにはどうするか。
それは「その人よりも知識を身につけること」これに尽きると思います。
そういった人達は得意分野の知識はすごくても、意外とそれ以外の知識はあまり詳しくなかったりするかもしれません。
「こいつ、自分よりも知識を持ってるな」「自分の知らない知識を持ってるな」
一度でもそう思わせることができれば、なかなか真正面から攻撃してこなくなるはずです。
ただ、最初の頃は流石に難しいと思うので、言われてわからなかったことや答えられなかったことは必死で調べて覚えて、さらに周辺知識も学んで次回は絶対答えられるようにする。
症例報告会など部内で発表するような機会があれば、新人だからある程度でいいや、ではなくて完成度を120%まで作り込む。
そういった地道とも思える作業を積み重ねることが、意外と近道だったりもします。険しい道のりではありますが。
よく聞くセリフについての感想
「とりあえず3年は続けよう」
よく聞く言葉ですね。
果たしてそれは守るべき意義のあることなのでしょうか。
私自身の経験としては3年続けることで得たことは確かに数多くありますが、それは「必ずしもその職場でなくては得られなかったか」と言われると、諸手を挙げて賛同することには考慮の余地が残るような気がします(その職場で得たことが大したことなかったという意味ではありません。身バレしたときのために一応)。
薬剤師免許があれば薬剤師の働く場所はそこ以外にもたくさんあります。
現に3年未満で転職していった同期は皆、別の職場で生き生きと楽しそうにしており、またそれぞれの職場で活躍しています。
「3年」に縛られて精神をすり減らすくらいなら、無用に耐えることに意味はありません。
そのため、3年という縛りは全く気にしないでいいと思います。
よく「大きいところのほうが勉強できる」ということも聞きますね。
私もそのような考えのもと、新卒では大病院に就職しました。
確かに大きければ色々と勉強することの幅は広いです。
ただ、その職場でしか活用できない知識というのも多いです。
私の例で言うと、私は抗がん剤を扱わない病院に転職したので、前職場で1日の業務の半分ほどを占めていてかなり習熟していたという自負のある抗がん剤調製の技術や抗がん剤の知識は今は全く使用していません。
今後また違う職場に転職するかもしれないので一生使わないという保証はありませんが、その際はまたそこで勉強すればいいだけです。
今は中小の病院で勤務しているため大病院よりは小さいですが、薬を取り扱っていて患者さんを前にすれば、学ぶことはたくさんあると感じています。
そのため、「大きいところでなければ」ということは全くなく、結局はその人次第だということなんだと思います。
大きいところでも勉強しない人は勉強しないし、大きくなくても勉強する人は勉強する。
そのため、そこでしか絶対にできないことがしたいというなら別ですが、そうでなければ「大きい」職場にこだわる必要はほとんどないと言えるでしょう。
何を言いたいかというと、上記のようなよく聞くセリフに囚われてつらい思いをしながら今の職場に留まっているのであれば、それは幻想であり井の中のなんとかでしかないのでぜひ広い世界を見てみてください。あなたの職場は世界の全てではありません。
まとめ
- パワハラ上司の思考回路を考えてみる
- 職場内で信頼できる人を見つける
- 考え方を知る/変える
- 誰よりも知識を身につける
- 3年縛りなんてない
- 大きいところでも勉強しない人は勉強しないし、大きくなくても勉強する人は勉強する。結局はその人次第
- いまの職場は世界の全てではない
もしこの記事がせめてもの一助となることができたなら幸いです。
頑張ってください。応援しています。